――以前に伯山さんは、爆笑問題・太田光さんのシリアスなロングトークに「ピカソ芸」と秀逸なネーミングをしましたが、今回ご自身の声の演技に「〇〇芸」と命名するなら、なんと付けられますでしょうか?

伯山:何だろうな(笑)。今回のお仕事は芸でやっているという感じでもないんですよね。雇われ芸ですかね(笑)。雇われてやっていますので。
まあすべてのものが雇われ芸ですけれども、つまり講談だと自分で監督しているわけですよね。もともとの演出 だって脚本だってありますが 、自分で原型ないくらい変えることもあり、演者自分で演出自分みたいな。そういう中でOKを出してるのは結局は自分なんです。
ところが、今回のように監督がいて、監督のOKをいただいて、主人公の荘太郎だけに関わっていくというのは、これは僕にとっては普通じゃなかったんです。
荘太郎という人物の中にどれだけ入っていけるのかということは考えました。それは面白い体験でした。

―― 講談とどちらが楽しいですか?
伯山:そりゃ講談のほうが楽しいですよ(笑)。本業ですから。自分がOK出したりすればいいだけなので。でも、雇われているということも楽しかった。今回で言うと残る作品になるので。出来上がりをみたら、とても素晴らしかったです。これは皆様のおかげです。
ただ、声優さんたちはよく演出家の言うことを聞いてるなとびっくりしました。僕みたいな自我が強い人間は、絶対演出家の言うことなんか聞きたくないと思っちゃうんですよ。
僕自身も講談で師匠の芸を継承していくにあたり、教わったことを基礎としてそっくりそのままやってという流れはあるんだけれども、そこから先は自由なものがあるから、「こうしてください」と言われると学校の授業も同じですけれども、嫌なんですよね。「やれ」と言われると反発心が生まれちゃう。
そういう面で言うと、合わせる能力が他の出演された方々は長けていらっしゃる。だからチーム芸ですよね。そう考えると、普段の僕はあくまでピン芸なんですよね。ピンとチームでやるものがこうも違うのかと、そういう発見はありました。
ただ、塚原監督のことは信頼していたので、悪いものにはならないとは思っていました。第一、作品は監督のものなので、そこは自分の自我を出さないようにというのは苦労したことでもあり、面白いことだったと思います。だからまさに雇われ芸という感じですかね。