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SNSで注目「リアルすぎる赤ちゃん人形」が売れる“意外な理由”。制作者の思いを取材/2024年3月トップ5

リボーンドールはどれも“世界に1つだけの作品”

海外から取り寄せているキット

海外から取り寄せているキット

――日本でリボーンドールを中心に扱う工房はどのくらいありますか? 「業界自体の歴史も浅く、法人や個人事業主として活動しているところは非常に少ないです。正確な数を調査したわけではないのですが、インターネットで検索をすると、継続的に活動している大きな工房は現状5社ほどではないかなと思います」 ――工房によって完成した人形の雰囲気は違うのでしょうか? 「海外にいる造形師さんが作っている、何も手をつけていない“のっぺらぼう状態”のキットを取り寄せて制作をするのですが、同じ職人が同じキットを使って作ったとしても、まったく同じ人形にはならないんです。 例えば、オーブンで焼いて何層も色を重ねていく色付けの作業で肌の色が微妙に変わったり、目を入れる過程で瞳の大きさが異なって見えたり、制作過程で微妙な違いが生じます。そういう意味では、どのリボーンドールも世界に1つだけの存在です」 色付けの作業――欧米系やアジア系など、顔立ちもさまざまですよね。キットからではなく、一から作ることはないのですか? 「海外の造形師さんはたくさんのキットを生産するために、アジア風や欧米風、月齢の違いなどさまざまな“型”を持っています。その型を作るのに数百万単位の費用がかかるので、現状、国内で一からリボーンドールを作るのは難しいです。でも将来的に自分の理想の赤ちゃんを制作できたらいいですね」

1ミリの妥協も許さない制作過程

こだわりの後ろ姿――制作へのこだわりはありますか? 「顔の表情が動いたりすることはないので、目を開けている子は顔を見たら人形だとわかります。ですから、目は自然な輝きと奥行き感があるグラスアイを、唇や鼻には湿った感じを出すことでよりリアルに制作するよう工夫しています。また、うちの工房では後ろ姿が本物の赤ちゃんに見えるようにこだわっています。実際、抱っこしたときに他の人が見ても、お人形だとはなかなか気づかないと思います。特に髪の毛にはすごくこだわっています。 赤ちゃんの毛は細くて柔らかく、日本にある素材ではなかなか再現できません。日本の市松人形に使われているような毛は、太く固すぎて頭にフィットしてくれないんです。なので、自然に見えるモヘアというヤギの毛をポーランドから取り寄せて植毛をしています」
1本1本丁寧に植毛する

1本1本丁寧に植毛している

――リボーンドールの制作の流れを教えてください。 「まずは海外から届いたキットを洗浄し、きれいな状態にします。次に、人間の肌の特徴を再現するためのペイントです。肌の赤みや血管の青さも再現するので、ペイント自体には約20ほどの工程を重ねます。 具体的には、真っ白なキットに黄、紫、緑色などを薄く重ね、肌の色となるベース色を作ります。そして、肌のツヤ感を出す作業を行っていきます。それができたら、ガラス製の目を取り付け、最後に髪の毛を1本1本植え込みます。これらの工程が終わったら、リボーンドールの完成です」 ――オーダーメイドを受け付けることもあるのでしょうか? 「オーダーは受けておらず、完成したお人形の写真を見て購入をお願いしています。というのも、お客さんが望む雰囲気や特徴を映像や文章で共有していただいても、実際に完成した作品は必ずしもリクエスト通りに仕上がるわけではありません。 髪の毛のウェーブや長さ、ほっぺたの色合い、眉毛の形など、細かい部分の微妙な違いでもお客さんのイメージから離れてしまうことがあるんです。なので、工房のサイトの写真をじっくり見ていただいて、納得いただける作品があればお迎えしていただいています。 リボーンドールは安価とはいえない値段ですし、ネットショップなので気軽に手に取れないこともあり、みなさん吟味しながら最終的にどの子にするか選ばれています」
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購入者のタイプは主に3つ
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