中村さんはここでこんなふうに思ったと言います。
「人間も動物もいつか必ず死ぬ。また、病気もすれば怪我もする。治療して治るものもあれば治せないものもある。でも、それらを前に人間はその先を選択できるけど、犬には選択することができない。
生まれたときから『人間社会の犠牲』としての犬生を強いられたものの、やっと自由になれると思ったところで余命宣告。これからの豆きちには、できるだけ痛みをとってあげたいし、美味しいものを食べさせてあげたい。できれば、広い草土の上を自由に走らせてあげたい。あの繁殖場の劣悪な環境ではなく、清潔で柔らかなベッドの上で、豆きちが安心して旅立てるように……」
豆きちが時折メンバーに笑顔を見せてくれるようになった

限られた残りの時間が「生まれてきた意味」に変わってくれますように
豆きちは、しばらく動物病院に入院していましたが、ここでの治療はあくまでも限定的なものでしたが、それから数日後に退院。はぴねすの元で「その日」がくるまで穏やかに過ごすようになりました。
豆きちは、保護当初よりは少し元気を取り戻してくれた様子で、中村さんの顔を見上げては時折笑顔を見せてくれるようにもなりました。
その笑顔は「僕を助けてくれてありがとうね。僕、すごくつらいけど、でもお姉さんたちに会えて幸せだよ」と、豆きちが言ってくれているように映り、中村さんはまた涙が溢れそうになりました。
しかし、ここでの涙はグッと我慢。ここで泣いたら豆きちが不安がるかもしれません。
「これからの豆きちの短い時間が、せめて『生まれてきた意味』に変わってくれるように」と努めて笑顔で接し、「少しでも幸せを感じてくれるように」と明るくお世話をし続けることにしました。
<取材・文/デコ女子部>
デコ女子部
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