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YOASOBIが歌うNHKパリ五輪テーマ曲に「薄すぎる」の声。批判が的外れである理由

聞く人それぞれの共感を呼ぶ、黒子に徹した姿勢

YOASOBI (画像:The Orchard Japanプレスリリースより)

YOASOBI (画像:The Orchard Japanプレスリリースより)

 同時に、作者のAyaseはこの曲をスポーツだけに限定せず、聞く人それぞれの暮らしの中での戦いに置き換えられる言葉を選んでいます。 <勝ち負けがはっきりある世界は 好きだけじゃ生き残れない  いつも結果と成果 遊びじゃない そんなこと分かってる>  キャリア実現の夢、ビジネス、受験、部活。様々なシーンで共感を呼ぶコンセプトです。見方によっては、あまりにもわかりやすすぎるので、作詞に工夫がないと感じるかもしれません。  けれども、ここでのAyaseは一目で目的と意図が伝わる言葉を組み合わせることを徹底しています。老若男女が注目するオリンピックでは、YOASOBIならではの作家性よりも優先すべき事柄がある。「舞台に立って」のわかりやすさは、制約の中で制作するプロの我慢のことなのです。 “面白い詞を書くAyase”を押し出そうと欲張るのではなく、曲の後ろで黒子に徹する。その姿勢が、誰にでも当てはまる“舞台”を作る言葉を生んでいるのです。

冷静な曲と熱いギターソロ、さじ加減が絶妙

 曲調やサウンド面では新展開も見られます。YOASOBIのトレードマークだった電子音は影を潜め、ギターメインのバンドサウンドが新鮮です。そしてここでもAyaseの批評性が発揮されています。  いまの若い人たちが“ダサい”と感じるような古臭く歌い上げるギターソロをフィーチャーしているのです。モノローグの歌詞を淡々と歌うikuraとの対比で、そのダサさが効果的な仕掛けになっている。  曲全体はスポーツとは距離を取った冷静なトーンであっても、ギターソロは熱い。このさじ加減が絶妙なのですね。
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スポーツを美談のいけにえにしない、素晴らしいテーマソング
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