筋トレが女性ホルモンを超越する!という具合に、単純にできていないのが女の心身。体調と気分の大波は、途切れつつも確実にやってきます。いっそ無になりたいと願うも、生きているかぎりお腹はすくしトイレに行かねばなりません。
ふと、安彦さんは気づくのです。
「なんでいつまでもボロパンツはき続けてんの?」
下着の変え時って、難しくないですか。50歳も過ぎればいわゆる勝負も減ってきますし、とりあえず局部を覆っていればいいか、とエンドレスのローテーションにはまり、パンツはおろかブラジャーもへろへろの瀕死状態。
タンスをあけると、出るわ出るわ、襟ぐりが伸びたババシャツ、かかとの擦れた靴下、毛玉だらけのタイツ。それらをまとめると、漂(ただよ)ってきたのはこれまた負のエネルギー。
全部処分したら、これまたあら不思議。天から光が差し込んで、頭がスッキリするじゃないですか。
「閉経は女の終わりじゃない。ホントに『女終わってる』っていうのは、こういうことをいうのである」と安彦さんは悟ったのでした。
閉経に更年期、症状は人それぞれ異なるからこそ、女性同士のネットワークも大切です。
安彦さんも女友達に誘われ、「チアダン」に挑戦したり(ポンポンマジックでハッピーポンポンホルモン分泌)、メイクにはまってみたり(メイク売り場はワクワクのお花畑)、前向きに奔走します。
「好奇心の目を潰さなければ、トシをとってからも出会いってあるものだ」
つらくても、しんどくても、避けては通れない更年期。あなたも安彦さんと一緒に、勇気と元気と好奇心を、呼び起こそうじゃないですか。
<文/森美樹>
森美樹
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『
主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『
母親病』(新潮社)、『
神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx