芸術大学出身の茜さんは、職場内に貼るチラシ作成など、簡単なデザインはおこなっていました。それを見せたところ予想より出来が良かったのか、彼は勝手に対抗心を燃やし「別の就労移行(支援)でデザインを学ぶ」と言い出します。

写真はイメージです(以下同じ)
「私はデザイナーとして仕事ができる人のレベル感は分かります。子どもの時から絵が得意でなおかつ好きな人たちがゴロゴロいる業界です。
30代になってから1~2年学んだ程度の人が乗り込んでも、仕事にならないのではと伝えたんですけどね」
ある日の会話の中で、2人が出会ったマッチングアプリのIRODORIについて、
大輔さんが「有料になるらしいね」と言いました。IRODORIは2024年6月から有料になっていますが、茜さんと大輔さんが付き合いだしたのはそれより前です。
なぜ知っているのかと思って再度アプリをダウンロードしたところ、大輔さんが登録しているのを見つけてしまいました。そこで別れることにしたのです。
茜さんは以前から、母親のもとを離れて一人暮らしをしたいと思っていました。思いきって職場に相談したところ、隣の県の事業所に欠員が出そうだから異動しないかと提案されました。そこの事業所では仕事内容が変わり、昇給もあります。
一人暮らしをしたい。けれど、母親が許すとは思えません。
そこで相談したのが、茜さんの伯母(おば)でした。
彼女は、母親のせいで茜さんのお姉さんが自殺未遂をしたことも知っていました。伯母に自分の妹である母親を諫(いさ)めてもらうことにします。

母親は予想通り「一人暮らしなんて無理」と反対してきますが、伯母が「
家探しは私が同行して見てくるし、あなたは口出ししないで」と言ってくれました。
茜さんは念願叶って、新しい物件を契約します。母親に茜さんの新居を特定されないように、「
DV等支援措置」の手続きをして、一人暮らしの準備は整いました。支援措置とはDVや虐待等の被害者を保護するための制度です。
母親は最後まで気に入らないようで、ずっと文句を言ってきました。理解しあえないまま、茜さんは31歳で家を出ました。そこからずっと、実家には帰っていないそうです。
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