
母がよく作ってくれた麻婆茄子。ナスと肉の他の具材の方が多いのが母の味でした
結論から先に申し上げれば、母が重視していたのは、「野菜を特別扱いしないこと」でした。
例えば麻婆茄子。具材はナスと肉がメインではなく、他にもいろいろな野菜やちくわなどがたっぷり入っていました。
私にとってはこれがスタンダードな麻婆茄子であり、母は肉、魚、野菜を区別することなく、いろんな具材が組み合わさった料理を食卓に出してくれていたのです。
つまり野菜が不足しないようにたくさん食べなさいと言われるのではなく、おいしい食体験が先にありました。
もう一つ、忙しい朝の食卓によく登場したのが、スープ餃子でした。鶏ガラスープの中に冷凍餃子が入った料理で、そこにはニラやきのこなど必ず野菜が入っていました。
野菜が高級であるか、緑黄色野菜であるかなどは全く関係なく、ジャガイモ、もやし、玉ねぎ、キャベツなど、本当にいろいろな野菜が入っていたことが記憶に深く刻まれています。
先日、我が家の“なんでも具だくさん料理”について、母に質問をしてみたところ、
「子どもに野菜を食べさせようという意識よりも、まずは親として自分が元気で健康にいるために“バランスよく”を考えていたと思う。忙しかったから、いろんなものを入れちゃったわね!」
と、笑いながら回答が返ってきました。

スープ餃子には、いつも野菜やきのこが一緒に入っていました
野菜と勉強は同じ!? 無理なく習慣化するために大切なこととは?

我が家におけるある日の朝ごはんのおかず
子どもの味覚は大人とは違い、苦味や酸味に対して敏感です。
つまり大人が好むような野菜だけを組み合わせた野菜料理に抵抗を感じてしまうのは、決しておかしなことではありません。
野菜を食べなさい! とプレッシャーを与えたり、食べられないことに劣等感を植えつけるのは避けるべき。成長とともに食べられるようになることだってあるのです。
そしてもう一つは、野菜を食べる習慣は、勉強をする習慣に通じるものがあるということ。
「勉強をしなさい!」とプレッシャーをかけられて勉強ができるようになるわけではないのと同じで、言葉で厳しく言っても効果がありません。
野菜を食べる習慣をもっと自然なカタチで実践するためには、はじめに親の野菜不足をチェックしてみることも重要で、親子で一緒に取り組むのもよいでしょう。
全部が手作りで、親が用意するものという価値観から解放されて、一緒にカット野菜や野菜惣菜を買いに行ったり、いつもの炒め物に野菜を1つ加えてみるだけでも大きな成果があると思います。
とは言え、学力を高めるために野菜を食べるわけではありませんから、焦らずに無理なく食生活のチェックをしてみてはいかがでしょうか?
<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>