映画界の巨匠から「20年に1人の逸材」と評されていた34歳女優の“永遠の新人感”。最新作でみせる好演
蓮佛美沙子の魅力を「20年に1人の逸材」と評したのは、大林宣彦監督である。大林監督は、蓮佛にとって映画初主演作となった『転校生 -さよなら あなた-』(2007年)を監督した。
同作以来、ちょうど20年近く経った今でも蓮佛の存在感は、みずみずしい。毎週月曜日~木曜日よる10時45分から放送されている『バニラな毎日』(NHK総合)では、その魅力が実に顕著に浮かんでいる。
男性俳優の演技を独自視点で分析するコラムニスト・加賀谷健が、“永遠の新人”みたいにみずみずしい蓮佛美沙子の魅力を解説する。
生活に自然と溶け込む夜ドラ
NHK連続テレビ小説の通称は朝ドラだが、同じ15分枠で毎週月曜日から木曜日夜に放送されるNHKドラマ枠を夜ドラと呼ぶ。朝は朝ドラでしゃきっと、夜は就寝前に夜ドラでさくっと。生活に自然と溶け込む15分間である。 現在放送中の夜ドラは、蓮佛美沙子主演の『バニラな毎日』。ほどよく弛緩した作風で、夜のさくっと感に適している。毎話のテーマとなる洋菓子が、甘い夢と快眠を用意してくれそうな気にもなる。 でもパティシエである主人公・白井葵は、快眠というわけにはいかない。繁盛していたはずの店が閉店することになり、借金を抱えた。葵は、ひたすらバイトに明け暮れている。ただ、店舗は残してある。ある日、バイト先に料理研究家である佐渡谷真奈美(永作博美)がやってくる。葵は真奈美の料理教室として閉店した店舗を渋々貸すことにする。
こんな魅力的な新人俳優がどこにいたのか……
料理教室の初回にやってきたのは、外資系コンサルタントの順子(土居志央梨)。葵は完全に真奈美のペースにのまれながらもサポート役に回る。内心納得しているわけではない葵は、かなり淡々と無愛想である。相手が有名ミュージシャン・秋山静(木戸大聖)でも同じ。 眼差しだけはどこまでも澄んでいる。洋菓子作りの作業中、葵は基本的に相手の様子を見つめている。まん丸の目を見開いて、ひたすら見つめる。クリアな凝視を執拗に繰り返す。 この素晴らしい凝視を見たとき、筆者は最初、葵役を演じる俳優が誰だかわからないで見ていた。こんな魅力的な新人俳優がどこにいたのか、と呑気に。いや、新人にしてはあまりに演技の体幹が良過ぎる。何か、見たことがある気がじわじわ、じわじわ……。
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