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映画界の巨匠から「20年に1人の逸材」と評されていた34歳女優の“永遠の新人感”。最新作でみせる好演

“永遠の新人”みたいにみずみずしい魅力

 見たことがあるどころじゃなかった。実際に目の前にしたことがあるのだった。かなり前だが、ある作品で朗読を担当した蓮佛の映像インタビューで、筆者がインタビュアーを任されたことがある。  聡明な受け答えの人だった。そしてインタビュアーに注ぐ透明な眼差し。その記憶を手繰り寄せてみて、やっと気づく。あぁ、葵役で一際クリアなあの眼差しと同じ俳優なんだと。  これはちょっとしたデジャヴュというやつなのか。不思議な感覚である。でもそれくらい、『バニラな毎日』の蓮佛美沙子は、極めて新鮮な印象を与える。“永遠の新人”みたいにみずみずしい魅力の持ち主である。

「魔法使い」のようだった大林宣彦監督

 その稀有な魅力を裏書きする評言がある。蓮佛にとっては映画初主演作となった『転校生 -さよなら あなた-』(2007年、以下、『転校生』)の大林宣彦監督の言葉「20年に1人の逸材」である。出典元がはっきりしていない言葉であるにもかかわらず、蓮佛の才能を説明するときに引用されることが多い。  2020年に監督が82歳で亡くなったことを受けた蓮佛は、監督の存在についてこうコメントした。「監督は私が知る限りいちばん魔法使いに近い人」。このコメントは、ほんとうにそうだなと思った。上述した蓮佛インタビューよりさらに前、大林監督にも直接会ったことがある。  高校生だった筆者がある映画祭事務局に押し掛け、大林監督に面会する機会を得た。監督は歓迎してくれ、大きな手でみかんをむいてくれた。帰り際には、こちらの緊張を解くために優しく肩を抱いてくれた。  あの手と抱擁から感じた温もりは、まさに「魔法使い」にだけなせるものだった。そんな映画的記憶を手繰り寄せてくれる蓮佛美沙子という俳優もまた『転校生』から20年近く経ってもみずみずしくいられる魔法使いの弟子なのだろう。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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