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「とても残念」「知らなかった」スターバックスと映画『ウィキッド』のコラボが物議を醸したワケ

 第97回アカデミー賞で10部門にノミネート、2部門を受賞した『ウィキッド ふたりの魔女』が日本でも公開され、2024年以降公開の洋画実写史上No.1の大ヒットスタートとなった。作品評価は絶賛が多く、現在Filmarksでは4.3点のハイスコアを記録している。
日本版『ウィキッド ふたりの魔女 ― オリジナル・サウンドトラック』

日本版『ウィキッド ふたりの魔女 ― オリジナル・サウンドトラック』(ユニバーサル ミュージック合同会社リリースより)

 だが、SNSで物議を醸していることがある。それは、スターバックスのコラボレーション宣伝だ。コラボ商品のタンブラーやカードギフトそのものは好評だが、「コラボをしたこと」自体が批判されている印象だ。

問題への議論には意義がある

 このことを炎上と捉えることも可能だろうが、糾弾をする声はあるものの大きく拡散されているわけではなく、背景をまとめた投稿に対して「正直まったく知らなかった」「本当にいろんな人にちゃんと伝わってほしい」などといった反応もある。 「世界的に批判されているスターバックスの問題があるのにも関わらずコラボをしてしまうのは、映画の内容からしてもとても残念」といった声もあり、それは正当な意見だと同意する。何より、この機会に現実の世界にある問題を認識し、議論をすることには、大きな意義があると思えたのだ。まとめていこう。

批判されたシオニズム、労働組合への提訴もあった

スターバックスコーヒー 企業の看板 ロゴマーク

イメージです beeboys – stock.adobe.com

 なぜスターバックスは批判されているのか。それはスターバックスが「シオニズム支援企業」だとみられているためだ。  シオニズムとは、19世紀末ヨーロッパにて、ユダヤ民族の間で高まったユダヤ人国家建設運動のこと。現在のイスラエルの建国の理念で、パレスチナ問題の根底にある思想である。創業者兼元CEO、現・大株主であるハワード・シュルツが、自身のユダヤ人としての背景やシオニズムへの支持を公言している。  イスラエルによるパレスチナのガザ地区への侵攻に対し世界各地で抗議活動が起きている中で、虐殺や民族浄化を支持していると捉えられ、そうした声は中東を中心にボイコット運動へも発展し、その影響でマレーシアでは実に50店が閉店に追い込まれたとの報道もあった。  ボイコットの是非ももちろん議論されるべきではあるだろうが、スターバックスの他にもイスラエルへの支持をしているとみられ批判されている企業は存在しており、確かな根拠と信条に基づいての批判と意志そのものは、個々人が持ち続けていっていいものだろう。  また、2023年10月にはスターバックスの「労働組合」がパレスチナへの連帯をXで表明したが、スターバックス本社から「投稿が多くの顧客を怒らせ、会社の評判を傷つけた」として同社ロゴ使用の差し止めを求める提訴をされている。会社と労働組合との間でこういった対立と分断があることも、認識しておいたほうがいいだろう。
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『ウィキッド』本編にある社会問題と戦争のメタファー
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