石野さんは怒りを抑えるようにして、現実的なことも考えていました。
「私はフリーランスなので案件は自分で獲得しなければなりません。娘を出産したときも数ヶ月休みをもらっていましたが、その期間で私の案件を違う人が担当するようになり、仕事は減りました。
夫の一言はたしかに悲しいですが、家族を支えるためには無理して働かなければなりません。なので、早めに仕事に復帰することも考えていました」

実際に、フリーランスで働く人は出産後の復帰が早いといわれています。
「法律上、パートや社員は産後8週間が経過しないと就労できないことが定められています。しかし、フリーランスにはその法律が適用されないんですね。その期間はもちろん給料は出ないので、産後すぐに働くことは珍しくありません」
夫の理解はまったくなく諦めていた石野さん。自分でやるしかないと、産後1ヶ月で仕事に復帰することに。
「思い出したくもないです。もし夫が少しでも精神的なサポートをしてくれたら、働かなくてもいいと言ってくれたら、少しはラクになれたと思います。体力もなく精神的に不安定な時期に働かされ、あのときの恨みは消えないでしょうね」
今は夫婦ともに仲良く過ごしている石野さんですが、今でもあのときの言葉を思い出すことがあるそうです。
<取材・文/Honoka Yamasaki イラスト/ただりえこ>