実はその後、驚きの展開が待っていたのです。

「そのお爺さん、その事件以来しばらく、来店しなかったんです。どうやら一軒屋に一人暮らしだったらしくて、当時の噂では遠縁を辿って身を寄せているとかなんとか。私も『まあ、元気でやってくれてればいいなあ。』とか思ってました。…ところが!」
小春さん、声がちょっと大きくなりました。
「ある日出勤したら、なんと! そのおじいさんがコンビニにいたんですよ!あれは本当に驚きました。しかも、来店したのは、バイトとして採用されたからだったんです。
驚いて店長に事情を聞いたら『
あの人、住む家も無くなって、年金だけじゃとてもやっていけないそうなんです。採用したのは情にほだされたからです。東山さん、ここはひとつ人助けと思ってください。よろしくお願いします』と言われて。まあ、私もいろいろ思うところはありましたけどね。」
それから小春さんは、新人バイトとなったおじいさんに、仕事を教える立場となりました。「もちろん、気持ちの切り替えに抵抗ありましたけどね。でも、そこは仕事だからと思って割り切って。
そうそう、おじいさん、最近はレジ係もするようになったんですが、お客さんに『
モタモタすんなよ』とか言われて、それでキレて口論になっちゃったんですよ。その後事務室でおじいさんにやんわり注意したんですが、以前と比べてちょっとは反省するようになりましたね。人間って変わるんだなあって思いました。」
もちろん、彼はきっぱりタバコを辞めたそうです。かなり手痛い禁煙治療となりましたね…。
<文/榊原瑠美>