元キー局アナ・38歳で地元北海道に出戻った私が「中古で買ったボロボロの靴」をどうしても捨てられないワケ。
この靴は私の再出発をずっと近くで見守ってくれていた
運転については正直まったく向いていませんでしたが、この靴を履いてガンガン通い、仮免試験も一発合格、そして免許センターの試験でも一発合格。ヒヤヒヤしながらもなんとか喰らい付いていった感じ。
しかし、以前もこちらで書いたことがありましたが、とにかく私は心配性で小心者で運転が苦手。そして運動神経がない。そんな私にとって愛犬のために一念発起した普通免許取得というのは、北海道で迎えた新しい人生での一大イベントだったのでした。
その後もこの運動靴を履いて、雨の日も風の日も雪の日も愛犬とお散歩に出かけました。またあるときはこれを履いて小樽まで一人バースデーを楽しみに行きました。一人でお寿司食べたなあ。ぐすん。
はたまた数年ぶりに仏像にまつわる連載を始める記念すべきタイミングでも、この子を履いて札幌の大仏を拝観しに行ったことがあったなぁ……なんて。
この靴は、私の北海道での再出発をずっと近くで見守ってくれていた存在だったのです。
私がとにかくたくさん日々動き回った証とも言えるのかも。正直、水も漏れてきますし、多分履いているうちに、どんどんどんどんこの靴は壊れる一方だと予想されますので、実際に履くことは今後できないでしょう。
でも、この子は私の人生の記念碑の一部として、手放しをせず取っておこうと思います。
この靴そのものが私の挑戦の歴史を物語っている!
なんて感傷的になり、このたびこの靴は押し入れ行きとなりましたが、数年後、家族の誰かがこの靴を発見したら……あまりの汚さに絶句して自動的にゴミ箱行きでしょうね。
本人にしかわからない特別な価値がある思い出品なのでした。
<文/アンヌ遙香>アンヌ遙香
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne
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