Entertainment
News

「バカにしてる」星野源のユーモア広告に批判殺到!隠された“おごり”が反発の根本原因であるワケ

問われるべきはユーモアの表現方法

けれども、このポスターが反発を招くのも、少しだけ理解できます。あのあざといアナログ感が鼻につくと感じる人がいても不思議ではないと思いました。 それは、批判されているプロモーション戦略云々ではなく、むしろ最近の星野源のおしゃれな音楽性によるところが大きいのではないかと思うのです。つまり、問われるべきはユーモアの表現方法なのです。 今回のアルバム『Gen』は、とても先進的なポップスです。海外のマニアックな音楽を取り込みつつ、シンガーソングライター星野源の内省を、より実験的に深掘りした仕上がりになっています。大ヒット曲「SUN」や「恋」のような国民的ポップスター路線とは異なり、世間一般に浸透している親しみやすい「星野源」像からは距離を置いた実験的かつ最新型のサウンドです。 当然、その新しい作風と、地域のお知らせ的なアナログ感、そして昭和のご近所感の古臭さはマッチしません。それを分かったうえで、あえて“面白い”ものとして打ち出したことが、今回の広告メッセージの核なのだと思います。

広告代理店的なユーモア装飾で、音楽の価値が正確に届かない

Gen [Gen Box Set “Poetry”]

Gen [Gen Box Set “Poetry”] [BOX + CD + BOOK](ビクターエンタテインメント)

しかし、見る人によっては、その意図の中に“星野源が他のJ-POPとは一線を画している”といった驕(おご)りを感じるのではないでしょうか。ポスターの素朴なロゴの裏側には、『Gen』がいかに多くの創意工夫と鋭いアンテナによって作り上げられたかという反語的なメッセージが込められているのです。 それをストレートに伝えるより先に広告代理店的な“スマートな”ユーモアで装飾してしまったために、結果として音楽の価値を正確に届ける手段を失ってしまったとも言えます。それこそが、今回の『Gen』広告プロモーションの最大の失敗と言えるでしょう。 もちろん、とにかくSNSでバズらせないことには広告効果が望めない世知辛(せちがら)い現実もあります。けれども、このような形で拡散したところで、アルバムの売り上げにどの程度の影響を期待できるのでしょうか? 理想論かもしれませんが、音楽の価値を分かりやすく正確に伝える地道なプロモーションが、最終的には勝つと信じたいところです。 <文/石黒隆之>
次のページ 
別の場所でも昭和レトロな広告を展開
1
2
3
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ