千葉県の団地暮らし→“10世帯の限界集落”に家族で移住。「先のことを考えすぎずに選択できた」ワケ
限界集落を選んだ理由は「たまたま良い物件があったから」
2人の中で、「移住」という選択は、ポンと出た思いつきではないことは理解できました。しかし、選んだ場所が限界集落と呼ばれる場所なのは、普通の人からすると「なぜ?」と感じます。なぜあえて限界集落に住むのか、その理由を教えてもらいました。
裕佑さん「今の場所を選んだ理由は、欲しい家がたまたまこの限界集落にあったからです。限界集落をあえて選んだわけではないんですよね。限界集落って言葉だけ聞くと、ものすごく不便そうなエリアに感じますが、僕達が住む場所はそんなこともないんです。
自宅からは、車で15分走れば国道に出ますし、15分で大型スーパーがあり、新幹線の駅は30分で到着します。もちろん、Amazonなどの荷物も届きます。住まいを探す際は、病院や将来的な子どもの通学距離も考えて探していて、今の場所はすべて僕らの条件をクリアしています。周りの人は「あんな山奥に」って言うけど、僕らからすると暮らしやすい田舎だなって印象なんですよ。
道や車は昔より良くなっているし、インターネット販売も便利になりました。将来的には自動運転やドローン配送など、ますます移動のための労力がさらに減ってくると考えているので、高齢になってからの生活も心配していません。少しくらい山奥であっても昔ほどの不便さは感じないのではないかと思うのです。
逆に自然環境や空気の良さの価値は、将来にわたって大きな価値をもたらしてくれると思うのです。加賀市もそうですが、昔はあまり評価されなかった場所でも、現代や近未来の技術の発展を踏まえて見直してみると、埋もれている魅力的な場所を再発見できると考えます」
ちなみに限界集落では、現在は息子さんたちと同世代の子どもはいないと言います。自然の中での教育とあわせて、子どもの社会性の発達を考えると、やや不安に感じるかもしれませんが、その点も問題はないと話します。
裕佑さん「同世代のお友達が近所にいたら嬉しいですが、現状それは叶っていません。ただ、車をちょっと走らせると市内にアクセスでき、現在は一般的な交流も持てています。上の子は保育園にも通っており、つながり不足は感じていません。最近では、子どもが友達を作り、みんなでうちに遊びに来てくれることが増えています。そうしたやり取りを見る中で、自分たちらしいつながりの形が見えて来ているように感じますね」
「とりあえず3年」そんな軽やかな気持ちで理想の暮らしを追求
ここまでの話から、近藤さん一家の暮らしぶりは、限界集落のイメージとは異なり、想像よりもずっと現代的で不便さもないように感じます。とはいえ、やっぱり移住は移住。理想を追いかける一方で、「住んでみて、合わなかったらどうしよう」という不安はなかったのでしょうか?
裕佑さん「『定住』『永住』ってなると、どうしてもハードルが高くなるのは分かります。僕たちは定住を目指していますが、同時に『とりあえず3年やってみようか』といったスタンスで、当初の移住計画を始めました。都会に戻る気持ちはありませんが、とはいえ、もし本当にダメだったら戻ればいいじゃんと。
僕は教員免許(中学校)があるし、妻も保育士資格と教員免許(幼稚園・小学校)があります。どこでも働けると思ったら、移住に対する気持ちも軽くなりました。今は、転職も引越しも珍しくない時代です。だからこそ、あえて先のことを考えすぎず、フットワーク軽く移住という選択は取れています」
現在移住2年目の近藤一家。これからどんな暮らしや課題、幸せが待っているのかは未知数ですが、「子どもの3歳までをどう過ごすか」といった話は、筆者も今一度考えさせられるような気持ちになったのでした。
【特集】⇒限界集落で子どもを育てる
【近藤裕佑】
赤ちゃんから楽しめる一棟貸しの宿「古民家ゆうなぎ」・自然体験活動団体「かが杜の学び舎ゆうなぎ」代表。自然体験活動指導者や教員としての経験を活かし、「原点教育(人間の古くからの生活や自然に触れ、これからの生き方を考える教育)」を主軸に自然・文化体験活動を提供する。YouTube: @kont_juniorhighschool_societyでは歴史の講義通しての知識面からの原点教育を試みる。
【近藤なぎ沙】
「古民家ゆうなぎ」「かが杜の学び舎ゆうなぎ」副代表。元学童保育支援員。保育士・幼稚園・小学校教諭免許を活かし「つながる子育て」をモットーに、自然・母親・親子がつながる居場所づくりや、「親子向け里山里海ステイ」の受け入れも構想中。木育インストラクター、おもちゃコンサルタントとしても、木のおもちゃの魅力発信や木育活動を行う。
<取材・文/おおしまりえ>おおしまりえ
コラムニスト・恋愛ジャーナリスト・キャリアコンサルタント。「働き方と愛し方を知る者は豊かな人生を送ることができる」をモットーに、女性の働き方と幸せな恋愛を主なテーマに発信を行う。2024年からオンラインの恋愛コーチングサービスも展開中。X:@utena0518
1
2


