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夫が痴漢で逮捕→妻が責められるケースが後を絶たないワケ。女性たちを苦しめる””

なぜ離婚できないのか

母親と子ども「夫が性犯罪なんて……うちなら即離婚!」と思うかもしれません。しかし、性加害者の妻には「別れない」、つまり婚姻関係を継続するという選択をする方も少なくありません。  性加害者の妻が「それでも別れない」主な理由として、以下が挙げられます。 ①経済的理由  もっとも多いのが経済的理由です。とくにパート勤務や専業主婦として長年子育てに専念してきた場合、離婚して生活の立て直しを図ることは容易ではありません。母子世帯の生活は経済的にも厳しく、厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」によれば母子世帯の平均年間就労収入は236万円(*2)、「国民生活基礎調査」によればひとり親世帯の相対的貧困率は44.5%となっています(*3)。 ②子どもの存在 「パパはいつ帰ってくるの?」という子どもたちの無邪気な問いかけにどう答えればよいのか│これも妻が頭を悩ませる大きな問題です。  とくに父親(つまり加害当事者)が子育てに積極的に関与している「イクメン」で、子どもたちも父親と良好な関係を築いていた場合、妻は「私の判断で父親を奪っていいのだろうか」という深い葛藤に苦しむことになります。 ③共依存関係  支援の現場で特徴的なものとして、加害者の妻が「この人のことを理解できるのは私だけ」という思い込みに囚われてしまうケースもあります。  この関係性の特徴は、問題を抱えている夫を支えることで、妻自身も「自分にしかできない役割がある」という救世主役割の意識(メサイヤコンプレックス)を強めていくことにあります。これは決して健全な関係とはいえませんが、事件の衝撃が大きければ大きいほど、逆に妻がその状況に縛られ、「私が支えなければ」という使命感に囚われてしまうことがあります。  また、世間からの強い非難にさらされることで、かえって夫婦で支え合わざるをえない状況に追い込まれ、その結果として共依存的な関係が強化されていくというケースも見られます。 *1 ジェクス「ジャパン・セックスサーベイ 2024」 *2 厚生労働省「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査」 *3 厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」 <文/斉藤章佳>
斉藤章佳
精神保健福祉士・社会福祉士。西川口榎本クリニック副院長。1979年生まれ。大学卒業後、アジア最大規模といわれる依存症回復施設の榎本クリニックで、ソーシャルワーカーとしてアルコール依存症をはじめギャンブル、薬物、性犯罪、児童虐待、DV、クレプトマニア(窃盗症)などあらゆる依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、現在までに3000人以上の性犯罪者の治療に関わる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『盗撮をやめられない男たち』など多数
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