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「無料で聞けるんだから笑」ミセス炎上騒動で問われるファンの民度。暴走する“信者”の傲慢が招く“バンド崩壊”の危機

熱狂と商業的ジレンマの狭間で

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画像:タワーレコード株式会社 プレスリリースより(PRTIMES)

こうした悩ましいファンを多く持つことが、今後のミセスに与える影響についても考える必要があります。なぜならば、その種の熱心さは信仰に通じるものであり、つまり、バンド活動の計算できる収益に直結する要素だからです。 バンドのイメージを考えればファンの行き過ぎた情熱は鎮めたいけれども、しかしながら、背に腹は代えられない状況もあります。 ファンのコミュニティが巨大化すればするほど、このジレンマに悩むことになります。今回の騒音問題は、その一端を示しているのです。

“若さ頼み”の人気は長持ちしない

では、こうした負の熱狂を中和させるにはどうしたらよいのでしょうか? そのためには、ファン以外の部外者にも関心を持ってもらえる環境を整える必要があります。「アーティスト←→ファン」という2者だけの関係にせず、「客」という中立的な経由地を作ることです。この経由地を通じて、アーティストとファンの双方に対し、冷静な視点を提供することができます。 ミセスを推すのでも信仰するのでもない立場から、ただ作品を楽しむだけの人、純粋に鑑賞したり批評したりする人も巻き込めれば、彼らの人気はより多層的で持続的なものになるでしょう。
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画像:TOKYO FM プレスリリースより(PRTIMES)

ただし、現状ではそれもなかなか難しいように思います。なぜなら、ミセスの音楽は、“若い人”限定のアミューズメントのような側面があるからです。裏声を多用した急激なメロディの上下動、唐突な転調、リズムチェンジにストップ・アンド・ゴー。これらは絶叫マシンのように即物的な刺激です。 そのため、すぐに消費されるので、常に新たな刺激を提供できないと飽きられてしまう運命にあります。つまり、アーティストもファンも“若い”ということでしか成立し得ないビジネスモデルなのです。 もっとも、それこそが、ミセスが他のアーティストと一線を画す唯一無二の個性だというジレンマでもあるのですが…。 Mrs. GREEN APPLEは、国民的なバンドです。今回の騒音問題は、いったん立ち止まってこの事実を再考するきっかけになったと言えるでしょう。 <文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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