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NHK『あんぱん』神回だったプロポーズ場面から『虎に翼』キスシーンを連想したワケ

告白からプロポーズ編神回へ感動が持続

NHK『あんぱん』©︎NHK 第85回は感動的だった。上京して代議士の下で働くのぶの元に嵩が高知から会いにくる。のぶが見つめる路地の先、荷物を手にした嵩が立っている。この路地で告白した嵩はのぶと抱き合う。紆余曲折を経て、物理的な距離を超えて、二人が心を一つにした瞬間である。  さらに感動的なのが、第18週第88回のプロポーズ場面。のぶが代議士に借りる一室で嵩と向き合う。カメラは二人を引きの位置(フルショット)から捉える。告白を経て嵩はのぶをいかに愛しているか伝える。  そして「僕が幸せにします」から溜めて、「結婚してください」とプロポーズ。のぶはぼろぼろ涙を流して笑顔で「不束者ですけんど、よろしゅうお願いします」と返答。あぁ、やっとこの瞬間がきた。と、この瞬間を噛み締める嵩の右目からもさっと涙が。最初引きの位置に置かれたカメラが、気付けば二人のアップを写して、その美しい涙を捉えている。  嵩らしい微動で顎を前に出したりして「うん」とソフトに発する。この涙、この微動が極まる瞬間こそ神回に相応しい。告白からプロポーズ編神回へ感動が持続する。

朝ドラが描く戦後のキスシーン

NHK『あんぱん』©︎NHK プロポーズ編まで随分長い時間がかかったが、こんな美しい場面を見せられたらそりゃたまらんよ。ぎこちない関係性なりに確かな愛を育むのぶと嵩を見て、2024年に放送され大きな話題になった朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)のある場面をふと思い出した。  主人公・佐田寅子(伊藤沙莉)が同僚判事・星航一(岡田将生)とぎこちないキスをする第95回である。この二人もまた愛を確かめ合うのになかなかの時間を要した。出会いの場面(第66回)からちょうど30話ほど。つるつるすべる廊下という突飛なシチュエーションのおかげで、キスをするという描写だった。  同作のキスシーンは1953年に時代設定が置かれていた。『あんぱん』と同じ戦後。1953年は、嵩役のモデルである『アンパンマン』の作者・やなせたかしが三越を退社して漫画家として独立する年である。史実に合わせ、嵩とのぶがプロポーズから結婚するのが1947年。  ドラマ上は翌年、祝宴を抜けた出した二人が夜の場面(第90回)でファーストキスをする。朝ドラが描く戦後のキスシーンは毎回どこかぎこちないけれど、深い感動にキュンとするものだ。 <文/加賀谷健>
加賀谷健
コラムニスト/アジア映画配給・宣伝プロデューサー/クラシック音楽監修 俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”として「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu
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