NHK『あんぱん』神回だったプロポーズ場面から『虎に翼』キスシーンを連想したワケ
戦後になった『あんぱん』(NHK総合)では、主人公・若松のぶ(今田美桜)と夫婦になる柳井嵩(北村匠海)が、やっと告白、プロポーズできた。
視聴者が待ち望んだ告白場面からプロポーズ場面まで感動が持続。特にプロポーズ編となる室内場面は、神回と呼ぶべき放送回だった。
男性俳優の演技を独自視点で分析する“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、嵩役の北村匠海や朝ドラが描くキスシーンに注目しながら、本作神回を解説する。
今田美桜主演の朝ドラ『あんぱん』は、今田演じる主人公・若松のぶと柳井嵩(北村匠海)が物理的な距離を縮めるまで、かなり時間をかけてじっくりその関係性を描いている。
東京から高知に越してきた都会的な嵩と地元で「はちきん」と呼ばれるほど元気なのぶは、幼なじみ。引っ込み思案で繊細な性格の嵩が同級生からいじめられるものなら、いつものぶがすっとんできて助ける。小さい頃から嵩はのぶに淡い恋心を寄せた。
でもなかなか自分の気持ちを伝えられない。なかなかどころか、戦中になり、紆余曲折を経てやっと戦後に告白、さらにはプロポーズする。いや、戦後になってもすぐに告白するわけでもなく、嵩はただただ、のぶとの物理的な距離を慈しみ、あわあわして傍観するだけだった。
第13週第65回、戦後ののぶは速記の勉強に励んだことをきっかけに、高知新報の記者として採用される。採用を報告しようと実家に走る場面。その走りを下手から上手へカメラがフォローする。
躍動感あふれるショットからカットが替わる。引きの画面。前景を走るのぶが下手からフレームアウト。後景には嵩と東京芸術高等学校時代の同級生・辛島健太郎(高橋文哉)が座っている。嵩が目の前を走っていくのぶを目で追う。
健太郎が「追いかけんでよかと?」と聞くと嵩は「俺はのぶちゃんが元気ならそれでいいんだ」とのんきに答えて一人、感慨に耽る(北村匠海がちょっと身体をのけぞらせる微動がいい)。こういうときにさっと駆けつけたらいいのになぁ。とも思うのだが、嵩なりに気持ちを温めている。
結果的に嵩がのぶにやっと気持ちを伝えて告白するのが、第17週第85回。子ども時代から実に85話も要した。
物理的な距離を縮めるまで
気持ちを伝える第85回
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