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36歳LDH俳優がNHK作品で存在感を増すワケ。開戦前夜を描いたドラマでは“想像以上の演技”にビビる

岩田剛典が上手に位置する大発見

 2021年から始動したソロ活動のツアーオフィシャル関係まで担当してきたぼくからしても、岩田剛典が演じるこの海軍人役は恐ろしいほどの名演だと明言できる。名演を名演で軽やかに上書きする才人は、ほんと慎ましい出番中にこそ、最大瞬間風速的な名演を見せてくれる。  陸軍中佐・瀬古明(佐藤隆太)が研究期間に言明する場面。サッとスッと挙手した村井が「総力戦を研究するには、武力、経済力、外交、あらゆる方面の正確なデータ、情報が必須です」と意見を述べる。  このとき、画面上の岩田の立ち位置に注目。微動だにしなかった座席から着席してキリッと起立する彼は、画面上手(かみて)にいる(だから何だではない!)。下手(しもて)はなぜか画面の半分以上が空いている。  うーむ、これは……。と、つい考え込んでしまったのは、『虎に翼』を含め、ソロシングル「Phone Number」のミュージックビデオだろうと主演ドラマだろうと、岩田の演技がもっとも際立つ画面ポジションはもっぱら下手と相場が決まっているから。もっとピンポイントでいうと、画面下手で右横顔が写るワンショットだということ。これは本人にも何度か伝えているくらいだ。  それがどうだろう、本作では完全なる上手。しかも下手ははっきりエンプティ。17日放送の後編にいたっては、模擬内閣の議論を聞いて激昂した瀬古に肩をぶつけられ、村井の身体の向きが機械的に変わる瞬間まである。  その身体の向きに合わせて、退室した瀬古の方へ振り返る村井がまたも上手、なおかつ左横顔をカメラに向ける。上手に位置する岩田剛典が名演を繰り出すという、新たな大発見が本作にはある。下手の法則を快く前言撤回!

NHK作品で際立つ岩田剛典

 マニアック過ぎる視点はこれくらいに。上述したように、『虎に翼』でのクラシカルな名演が、本作へのキャスティングに繋がったことは確かだ。慶應義塾大学OBとして出演した『岩田剛典が見つめた戦争』(NHK BS、2024年)放送も呼水になっただろう。  さらに、昭和100年目の2025年、岩田にとって初のMC番組『超越ハピネス』(NHK Eテレ)がレギュラー番組化するなど、岩田剛典がNHK作品で際立っている。俳優仕事もまた爆竹の勢い。その中で出演する本作では、上手でのポジショニングを足場にしながら、上手から下手へ自在に行き来する演技の飛躍が画面から見て取れる。  模擬内閣で総理大臣役の宇治田を最前列中央にして記念撮影をする場面を見てみる。白い軍服を着た村井が今度は画面下手でちらちら動いている。宇治田と板倉が会話するすぐ後ろ、帽子を直すのが見える。このさりげない直し方は、ほんの粋なアドリブなのか。  いずれにしろ、岩田剛典という俳優の器は広い。こちらは大船に乗った気分で、今度もまた大発見を楽しみたい。 <文/加賀谷健>
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朝ドラ『虎に翼』での岩田剛典
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