Entertainment

「何か足りない」“織田裕二”帰還で盛り上がるはずが…『世界陸上』に漂う違和感、その理由とは?

織田裕二の情熱に、響く相棒がいない

0917_織田裕二さん②

画像:株式会社BS日本 プレスリリースより(PRTIMES)

しかし、織田さんといえども、単体では輝きません。彼の熱さや思い入れ、もっと言えば思い込みをちょっとだけたしなめるようなことを言える人がいなければ、そのアクロバティックな発想は活きないのです。 つまり、“中井美穂”という世間の良識を体現した大人の存在があったことで、“織田裕二”という奔放な個性がわかりやすい輪郭を持つことができたわけです。 そのため、今回は織田さん自身も少し遠慮している様子がうかがえます。彼の呼びかけを受け止めたり機転を効かせて反応したりしてくれる人がいないからです。打っても響かないのであれば、自然とトーンダウンしていきます。 すると、口調やアクションはかつてのテンションを再現しようとしているのに、そこで語られる言葉の内容がいまいち攻めきれなくなる。思いをぶちまけるキャッチフレーズ的なキレ味はなく、全体的に説明口調になってしまっているのです。 そこには、空回りと孤立を心配して自制せざるを得なくなったスペシャルアンバサダーの姿があります。

世界陸上は「織田×中井」の物語だった

0917_織田裕二さん③

世界陸上といえば、織田裕二×中井美穂コンビだった 画像:公益財団法人日本陸上競技連盟 プレスリリースより(PRTIMES)

放送を見ていて、「ああ、ここはもっと上手くツッコめるはず」とか「いまの一言にはあえて乗っかったほうがいい」と思うことがたびたび。 改めて、世界陸上での織田さんには、中井さんのアシストが欠かせなかったのだと痛感します。 と、思っていた矢先。9月18日に中井さんがスペシャルゲストとして1日だけの復帰を果たしたのです。すると、途端に水を得た魚のように生き生きとする織田さん。 それまでの放送では宙に浮いていた織田さんの言葉が、中井さんによって手際よく回収され、投げ返され、織田さんのさらなるフレーズを引き出す。みるみるうちに番組にグルーヴが生まれていきました。 「これが世界陸上だよな」“中井美穂”という屈指のつなぎ役こそが、“織田裕二”を輝かせていたことを再認識する瞬間でした。 振り返ると、25年間の世界陸上の歴史は、織田さんと中井さんという個人の関係が熟成されてきた歴史でもありました。豪速球の荒れ球ピッチャーを操る、視野が広く情緒豊かなキャッチャー。 それこそが、“織田裕二”と“中井美穂”のコンビだったのです。 <文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
1
2
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ