
星野源さん 画像:UCCホールディングス株式会社 プレスリリースより
けれども、市場で大きな支配力を持つ特定企業のブランドと固く結びついた曲を国民的音楽番組で演奏するということに、もはや公共としての中立性などあり得ません。NHKに宣伝する意図はなかったとしても、問題はその演出が視聴者にどのようなイメージと認識を与えるかという点にあるからです。
当然、ここで問われるべきは星野源ではなく、NHKです。星野源には全く非はありません。問題は、受信料の徴収に関して放送法の原理原則で理論武装を徹底する一方で、公共放送の根幹に関わる商行為に近しいことをやっていることなのです。任天堂ミュージアムから星野源に「創造」を歌わせるというグレーゾーンの演出はそれに当たるのではないか、と指摘せざるを得ないのです。
もっとも、それが<何か創り出そうぜ 非常識の提案>(「創造」の歌詞)というNHKからのメッセージなのだとしたら、なかなか皮肉が効いているとも言えるのですが。
<文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter:
@TakayukiIshigu4