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“19歳女性”とスカルノ大統領の面談にも立ち会った「女帝」の正体 昭和の永田町を生き抜いた女性のたくましさと悲哀

 2025年、日本に初の女性首相が誕生。
『昭和の女帝  小説・フィクサーたちの群像』(千本木啓文著/ダイヤモンド社)

『昭和の女帝  小説・フィクサーたちの群像』 (千本木啓文著/ダイヤモンド社)

 しかし、それよりも先に日本には、永田町に君臨した女性“フィクサー”がいたーー。 『昭和の女帝 小説・フィクサーたちの群像』(千本木啓文著、ダイヤモンド社)は戦前、戦中、戦後という日本動乱の時期を舞台に、昭和の自民党政治を牛耳ったと言われる実在の女性・辻トシ子をモデルにした物語です。

岸田文雄元総理など、大物政治家が実名で登場

 辻トシ子はかつて「保守本流の女帝」と言われた、昭和史に残るフィクサー。1918年生まれ、32歳の時に大物政治家の秘書となり、政治の世界へ入ります。  吉田茂政権下、与党の幹部会に出席を許され、池田勇人、佐藤栄作といった歴代首相とも親しく、「対等に渡り合った」と言われる女性です。  岸田文雄元総理など、元総理大臣や政治家たちが実名で次々登場。ただし作中で主人公がもっとも対立する政治家は、実名ではありません。昭和史に遺る逸話を多数持つ人のため、誰がモデルかすぐおわかりになると思います。  さて、「フィクサー」とはよく聞く言葉ですが、英語でのスペルはfixer。そのままフィックスする人という意味であり、「まとめ役」「調整役」などの意味を持ちます。ただ日本語として一番近いのは「黒幕」でしょう。表立っては動かず、裏で手を引く人のようなニュアンスで使われることも多いと思います。  主人公・真木レイ子は、歌劇団に所属する女優。あまり芽が出ず、ホステスとの掛け持ちの日々、鬱屈していたところ、歌劇団のマネージャーから「いい話がある」と言われ、鬼頭という右翼の大物へと紹介されます。この男から、「政界最大の黒幕」と呼ばれた男(作中の名前は真木甚八)へつながり、事務所へと雇われることに。  気に入られたレイ子は最終的にはその甚八の養女となり、養父とつながりの深い政治家の秘書になります。これをきっかけに永田町に本格的に足を踏み入れ、「娘」として、「妻」として、「秘書」として政治の中枢に食い込み、ひそやかに権力を握るようになっていき……。  その活躍ぶりはまさにタイトル通り「女帝」。松本清張の小説のごとき、策謀が張り巡らされた壮大なスケールのストーリーです。冒頭にある、佐藤栄作に『リンゴの唄』を歌わせるシーンは強烈なインパクト。なんと、このエピソードはノンフィクションだそう……。

女が権力を持つとはどういうことだったのか?

女帝イメージ

イメージです ※画像生成にAIを使用しています

 昭和といえば、家父長制の全盛期。女性として初の議員秘書となったレイ子ですが、そのバックには当たり前ですが、養父や、夫となった政治家の存在がありました。  亡くなるまで女性として、当時ありえないほどの権力を握り、おカネを使い活躍した主人公・レイ子。しかし後ろ盾、つまりは味方ではある身内やフィクサー・鬼頭から自由を奪われていたり、行動制限をかけられたりと、まるで「操り人形」のようなシーンも多数登場します。  とりわけ印象に残ったのはかつて「父」の愛人のような存在だったレイ子が、その父親から還暦を過ぎた妻子もある政治家と結婚するように言われるところ。ありえなさに頭がくらくらしますが、レイ子は腹をくくり、仰せに従うことに決めます。「政治の魔力」に魅了されていた女性の、権力への階段を上るための覚悟を感じました。  作中には、現実に即して読むとひやひやする、緊迫感のあるシーンが頻繁に登場します。例えば、インドネシアでのビジネスに食い込みたい商社の男が、スカルノ大統領に19歳の「とある女性」を紹介(斡旋)。その面談にレイ子が付き添うシーンがあります。  後年、その女性は大統領の夫人となり、芸能界で活躍するそうなのですが……これは書いてしまっていいのかと読んでいるほうがびくびくしました。  昭和という時代に、女性たちが抱えていた苦労、苦悩が、永田町という、苛烈で残酷な世界にありありと描きだされている本作。2026年を生きる私たちが現代から批判することは簡単です。でも、そうしなければ生きられなかった人々のたくましさや悲哀は確かに存在する。複雑な気持ちを抱えながら読み進めました。  あくまで語り口は淡々としていて、だからこそ、物事の大きさ、とんでもなさを感じられました。  
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しぶとく諦めないで生きるということ
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