Entertainment

死者を描く重み。米倉涼子『エンジェルフライト THE MOVIE』は胸を打つ名作だけど、唯一もったいない点は

気持ちをふっと軽くする掛け合いも

 クルーゾーを担当する松山みのり(野呂佳代)と柏木史郎(遠藤憲一)は、本作における緩衝材だ。クルーゾーと親しい間柄だったサクラ(赤間麻里子)との交流を通し、故人の人柄が見えてくる描写には人間らしさがある。  また、死をテーマにした作品ではあるが、決して茶化すことなく、視聴者の気持ちをふっと軽くするみのりと史郎の掛け合いも面白い。クルーゾーパートは、『リーガル・ハイ』や『コンフィデンスマンJP』などを手がけ、本作の脚本も務めた古沢良太の巧みさが随所に光っていた。
 そして、那美はメキシコに渡り、美沙子の夫・譲司(木村祐一)と対面する。良家の美沙子をメキシコに連れ出し、借金返済のために休む間もなく働かせてしまったことを悔やむ譲司。ただ、那美は持ち前のきっぷの良さで、譲司の心の扉を丁寧に開いていく。壮大なロケーションだからこそ人間の繊細な感情の機微が浮き彫りになり、譲司と美沙子それぞれの愛情深さに胸を打たれた。

もったいなかった点

 少々残念に思った点もある。ドラマ版では基本的に1エピソードに1人の死者が描かれており、死者や遺族、国際霊柩送還士の心情に思いを馳せる余白が十分に残されていた。しかし、映画である本作では4人の死者の物語が描かれているため、“駆け足感”を覚えずにはいられない。
 健臣は旅費を視聴者からの善意でまかなっていた部分があり、「感動ポルノ」と揶揄されることもあった。また、真衣が国際結婚の難しさに直面していることがルカの口から語られていた。死者や遺族の背景が丁寧に描かれていただけに、「映画ではなくドラマの1エピソードとして見たらどうだったのか?」という思いがよぎった。
次のページ 
死を自分事として
1
2
3
Cxense Recommend widget
あなたにおすすめ