
©2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会
それだけではない。あくまで音に着眼するなら、五郎がチョンジュの食堂でビビンパの具材とご飯をまぜまぜしていた音を導くことができる。
クチャクチャ。クチュクチュ。粘り気のある音が鳴っていた。この音はJinが大好物のムルフェ(水刺身)を作るときにも必ず聞こえる。現在BTSワールドツアー中のJinが、北米公演の合間にムルフェを作る様子をアップしたInstagram投稿(2026年5月16日)がちょうど世界中のニュースで話題になった。
食べ物の音と音が国と国を越えて、響き合い、シンクロ。松重とJinはグローバルな音の共演を果たした。
大の音楽好きでも知られる松重は2025年に、パーソナリティを担当するラジオ『深夜の音楽食堂』で、BTSのリーダーRMの2ndアルバム『Right Place,Wrong Person』から「Come back tom me」を紹介した。
さらに星野源との番組『星野源と松重豊のおともだち』(NHK総合、2026年1月21日放送)でも同曲をセレクトしていた。
RMによるアルバム制作の過程を追ったドキュメンタリー映画『RM:Right People,Wrong Place』は2024年の第29回釜山国際映画祭でワールドプレミア上映されたが、松重が監督、脚本、主演を兼任した『劇映画 孤独のグルメ』もまた同じ上映枠の1作だった。
巨匠・黒沢清監督作『地獄の警備員』(1992年)で映画デビューした松重は今、マルチな才覚を研ぎ澄ましている。
そのことを示す集大成(であると同時に経過点)的な場として、日本外国特派員協会での記者会見(2026年4月16日)がある。
アメリカの経済紙『Forbes』の記者から、『孤独のグルメ』をハリウッド化するならどんな俳優がいいか質問されれば、ニコラス・ケイジかジョージ・クルーニーとワールドワイドな返答もできる。
さらに日本のドラマの「風潮」について、「何かをどんどんわかりやすくするってことがこれまで俳優としてやってきたこととちょっと方向性は違うんじゃないかなと。やっぱりお客さんは役者の表情とか佇まいから想像するものっていうこと。想像させることていうのは、丁寧でやさしいっていうこととは違う」と話した。
そうしたドラマが日本でも増えてほしいとも提言したのだが、『地獄の警備員』で演じた元力士役の強靭な存在感がいかに観客の想像力を掻き立てたか……。
他にも日本の制作体制の課題にも言及した、記者会見での松重の言葉は単に日本国内での発言にとどまるものではない。それは、“世界の中の言葉”として響いている。
<文/加賀谷健>
加賀谷健
イケメン研究家 / (株)KKミュージック取締役
“イケメン研究家”として大学時代からイケメン俳優に関するコラムを多くの媒体で執筆。アーティストマネジメント、ダイナマイトボートレース等のCM作品やコンサートでのクラシック音楽監修、大手ディベロッパーの映像キャスティング・演出、アジア映画宣伝プロデュースを手掛ける。他に、LDHアーティストのオフィシャルレポート担当や特典映像の聞き手など。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
X:
@1895cu