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成績優秀、問題行動なし…“普通の子”が「性加害者」になるまでに起きていたこと。「みんなやってる」がエスカレートの始まり<漫画>

「悪ふざけ」の延長でも、人生を左右する結果に

――負の成功体験や悪ふざけの延長線上に性加害があるとのことですが、加害行動をした子どもたちは、自分が悪いことをしているという認識を持っているのでしょうか? 斉藤:それが、ほとんどないんです。実際に加害行動をした子に話を聞くと、「みんなやっていたから」「悪いことだと思わなかった」「こんな大事になるとは思わなかった」と言います。すごく無邪気で、無自覚なんです。相手がどう感じるかというところまで考えや想像力が及んでいない。  これは心理学の用語で「暗黙理論」といいますが、SNSのアルゴリズムによって似たような情報ばかりが流れてくる環境のなかで、「みんなやっている」「それが普通なんだ」という感覚が、じわじわと植え付けられていくのだと思います。 ――性加害は身近なところから始まる一方で、その後の影響はとても大きいように感じます。 櫻井:そうですね。性加害は非常にハードルが低い犯罪だと思います。スマホ一台あれば盗撮もできますし、仲間内の悪ふざけの延長で一線を越えてしまうこともある。でも、ひとたび事件になれば、その影響は他の暴力行為以上に長く続くことがあります。  どんな加害行為も決して許されるものではありませんが、性犯罪は社会から向けられる目がとりわけ厳しく、その後の人生に長く影を落とすことが少なくないと、加害者臨床に参加するようになって強く感じるようになりました。 ――たしかにそうですね。 櫻井:子どもたちにはまだそこまで想像するのは難しいかもしれません。しかし、性加害は「ちょっとした悪ふざけ」では済まされないこと、一度起きてしまうと取り返しのつかない結果につながることを知ってほしいです。そのことをきちんと大人が伝えていくことも重要なのではないでしょうか。

自分ごととして考える

――ここまでお話を伺うと、性加害は決して一部の特別な子どもの問題ではなく、どの家庭にも起こり得ることだと感じます。 斉藤:まず、「うちの子に限って」という感覚は、今の時代は通用しないと考えています。私がこれまで見てきたケースも、いわゆる問題児ではなく、ごく普通の子どもたちでした。誤った学習や成功体験の積み重ねによって、本人が無自覚なまま加害者になってしまう現実を、まずは大人が知っていただきたいです。 櫻井:子どもたちを取り巻く環境が、親世代の子ども時代とは大きく変わっていることを知った上で考えたいですね。  今の子どもたちは、スマホひとつで膨大な性情報にアクセスできます。そのなかには正しい情報もありますが、誤った情報や加害を助長するような情報も少なくありません。親が知らないところで、子どもたちは日々そうした情報に触れています。だからこそ、親として「うちの子が性加害・被害に巻き込まれるはずがない」と思わず、「誰にでも起こり得ること」として関心を持ち続けることが大切です。 ========  親世代と全く異なる環境に、子どもたちがいることを改めて痛感させられます。「普通の子」が性加害者になる——。遠い話のように感じるかもしれませんが、誤学習の積み重ねとSNSがつくる「感覚の麻痺」は、今やどの家庭にも起こり得ると考えることが大切です。 【斉藤章佳(さいとうあきよし)】 西川口榎本クリニック副院長(精神保健福祉士/社会福祉士) 1979年滋賀県生まれ。大卒後、我が国最大規模といわれる依存症施設である榎本クリニックにソーシャルワーカーとして、25年にわたりアルコール依存症を中心に様々なアディクション臨床に横断的に携わる。その後、2024年10月から現職。専門は加害者臨床で現在まで3500名以上の性犯罪加害者の治療に関わり、その家族支援も含めた包括的な地域トリートメントに関する実践・研究・啓発活動に取り組んでいる。最新刊として『校内盗撮』(集英社インターナショナル)が8月7日に刊行される。 【櫻井裕子(さくらいゆうこ)】 助産師(さくらい助産院開業)   産後ケア、養育支援、看護・助産専門学校非常勤講師を務める傍ら、小中高大学生や保護者に包括的性教育やプレコンセプションケアについての講演を年間150回以上実践。2021年より斉藤氏と共に性犯罪加害者臨床で包括的性教育を行っている。 著書に『10代のための性の世界の歩き方』『性的同意は世界を救う』『10代のための「性と加害」を学ぶ本』共に時事通信出版局。 <取材・文/大夏えい>
大夏えい
ライター、編集者。大手教育会社に入社後、子ども向け教材・雑誌の編集に携わる。独立後は子ども向け雑誌から大人向けコンテンツまで、幅広く制作中。
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