
8月19日に発表されたポスター(厚労省 公式Xより)※現在は削除
厚労省の『ママがもうこの世界にいなくても』とのキャンペーンも、これと同様の罠にハマってしまったと言えます。
21歳でステージ4を宣告され亡くなってしまったという実話は、その世間に与えるインパクトにおいて『ラヴ上等2』の刺青や小指のないビジュアルに負けないほど強烈だからです。もちろん、札付きのワルと、不幸にも若くして重い病に襲われた人が同じだというのではありません。
ただし、一目でわかりやすく、鮮烈で、瞬間的に人の心に刻み込まれるコンテンツだという点は共通するものがある。
そして、そうした強さは、ときに受け手がその先にある意味を熟考する猶予を奪ってしまいます。本来、法務省や厚労省が伝えたかったはずのメッセージを、その圧倒的にわかりやすいビジュアルやストーリーが押し流してしまう。
一連の騒動で、更生や保護制度やがん患者と家族の支援にもたどり着かずに終わってしまった理由です。
そして、今回の炎上で一度立ち止まる必要も生まれました。
そもそも省庁の広告って、そんなに面白かったり、美しかったりする必要はないんじゃない? と。
<文/石黒隆之>
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter:
@TakayukiIshigu4