熊本で子ども食堂を始めた理由「お母さんを助けたい」

『或る女』(講談社)
──そして熊本では、子ども食堂をやられているそうですね。
井上:そうですね。現代の闇とでも言うのか、隠れネグレクトみたいなものがあり、放っておけないと、ずっと思っていたんです。
──行動力がすごいですよね。かなり大変なことだと理解しています。
井上:気になること、やりたいことは、思っているだけじゃなく、行動しようと決めたんです。なんでもやろうかなと、それがどんな結果になろうとも。そんなことをやっても自己満でしょと言う人もいますが、その人たちにどう思われても構わないので、わたしはただひとりでも救えればと思っています。小さな力だけど、人生に正解はないし、なんでもいいからやる。誰かのアドバイスどおりやり、100%失敗しないかと言ったら、そんなことないじゃないですか。
──始めてみて気づいたようなことは?
井上:わたしも育児が大変だったから、お母さんを助けたいと思います。SNSを見ると育児ノイローゼになっている人がいて、唯一吐き出せるところがネットですみたいな。そういう人たちにたどり着いてほしい。うちに子どもを預けてリフレッシュしてほしいみたいな、そういう気持ちなんですよ。わたし預かるから、その間友達と会うとか、とにかく悩まないでと。
──なるほど、子どもたちだけでなく、お母さんたちにも手を差し伸べたいと。
井上:母親業って本当に地味で、誰からも感謝されないし、お母さんたちすごいんですよって、わたし思っちゃう。
だから子ども食堂も子どもたちだけじゃなく、お母さんたちも一日夕飯、ランチなくしていいから、子どもたち預けてどこか食べておいでというような場所になればいいかなと。1食作りたくないから、その間寝かせてでもいい。お母さんたちも休めればいいと思っています。
──どのような50代を過ごしたいですか?
井上:とにかく楽しむ、やりたいことをやる。子育てでわたしの時間は止まっていたから、自分のために使う時間はゼロで来たから。
でも、中・高と今度大学になるけど、子どもを育ててよかったなと思うし、いろいろ大変なことはあったけれど、今から「わたしはわたしで生きるからね」と子どもたちにも言っています。
──今後、やりたいことはありますか?
井上:子ども産む前は旅ばかりしていたから、彼らが大学生、社会人になったら旅には行きたいなと思いますね。ただ、子どもたち大丈夫かなという不安、寂しさもあるけれど、これからはわたしの時間なんですよね。
だから、彼らを信じるしかないし、あまり過干渉になってもよくない。ある程度放置で彼らを信じるスタンスがすごく大事だと、最近つくづく思っているところです。
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>
トキタタカシ
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、
インスタグラムにて写真レポートを行うことも。