先行きの見えない時代に不安を覚えるのは、芸人も一般人も同じこと。だからこそ夢を追って一発逆転を狙う若者が増えても不思議ではありません。しかし、現在のお笑い界を見れば、むしろ芸人を志すことに慎重になっている傾向が見て取れます。
たとえば吉本興業の養成所である「吉本総合芸能学院(NSC)」は、2027年度について「応募状況が定員に満たない」ことを理由に、札幌・名古屋・広島・福岡・沖縄の5校で生徒募集を中止し、東京・大阪の2校のみ募集すると発表しました。
また2026年7月11日放送の『ゴッドタン』(テレビ東京)では、マセキ芸能社が2025年に始めた養成所「マセキ芸人アカデミー」について、同事務所所属のきしたかのと三四郎が「説明会に1人も来なかった」、「人知れず募集を締め切っていた」と発言(その真偽は不明ですが)。
各養成所で志願者数が発表されているわけではありませんが、物価高や将来への不安が続く社会で、「売れるかどうか分からない期間を何年も過ごし、賞レースで頂点に立っても将来は保証されない」という世界に飛び込むことは、あまりにも大きな賭けに映っているのではないでしょうか。
医師免許を持つしゅんしゅんクリニックPさんや、現役弁護士芸人としても知られるこたけ正義感さんなど、ハイスペックな国家資格を持つ芸人も増えてきました。しかし高校や大学を卒業してからお笑い一筋で頑張ってきた中堅芸人たちが、新たに職を持とうとしたときに、芸人仕事で培ってきたタフな体や根性を生かしつつ、収入も安定性のある現場作業や肉体労働に行き着くのは、至極当然とも言えます。
今後も賞レースでの勝利後に、ブルーカラーに就職する芸人が増えていくかもしれません。
<文/エタノール純子>
エタノール純子
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中