「この麻酔のような酩酊感は何?」宇垣美里が映画『バックルームズ』に溺れる。“毒でしかない”のに目が離せない魅力
元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。

そんな宇垣さんが映画『バックルームズ』についての思いを綴ります。

●作品あらすじ:家具店主クラークが地下で偶然、現実世界とは異なる不気味な空間「バックルームズ」への入口を発見。黄色い壁と無限に続く部屋で迷い込んだ人々は、出口を探しながら正体不明の怪異に襲われる。やがてセラピストのメアリーも謎に巻き込まれ、この異空間の正体と、そこに隠された秘密が徐々に明らかになっていく。
YouTubeで注目を集めた映像クリエーターが19歳のときに撮影・映画化した作品を映宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下、宇垣美里さんの寄稿です)
どこか懐かしく、ほのかに温かく、退屈なはずなのに目が離せない。ここに未来はないとわかっていても、毒でしかないことを知っていても、それでもとどまっていたくなる。何の解決にもならないって、わかっているのに。この麻酔のような酩酊感はいったい何。
家具店を営むクラークは、ある日、自身の店にあるはずのない隙間を発見。その先には壁の裏側へと抜け落ちるように続く、どこまでも広がる異様な空間があった。
彼はその全貌をとらえ証明しようと従業員を引き連れ、記録用のビデオカメラと共にその空間に再度足を踏み入れる。

2019年頃にアメリカのネット上の匿名掲示板で生まれた都市伝説が元ネタである本作。特徴的な黄色い壁紙と不穏で無機質な蛍光灯、どこまでも無数に広がる部屋に物理法則を無視して積み上げられた家具。圧倒的なクオリティと存在感で、この映画の主役は映画美術にあるとすら感じさせる。
無個性で単調な見慣れた景色のはずなのに、何かが決定的に現実とずれていると感じさせる空間は、不気味の谷のように生理に反する違和感がぬぐえない。
つきまとう不穏さが不安と恐怖を倍増させ、胸をざわつかせるまさしくホラーであるはずなのに、なぜかたまらなく美しく、ノスタルジックなヒーリング効果が否めない。

『それでも夜は明ける』のキウェテル・イジョフォーと、『わたしは最悪』のレナーテ・レインスヴェがバックルームズの中で迷い、戸惑う様をしっかり演技で見せる。
ある種の自己投影のような空間で、慰めるように思い出に浸る様子は辛気臭く、滑稽でいてどこか不憫で、その気持ちを知らないとは言えないから、なんだか見ていて共犯者のような気持ちになる。
今作が初監督作品となるケイン・パーソンズはなんと現在21歳! 16歳のときYouTubeにあげた「バックスペース」をモチーフに作った動画が世界的な話題となってA24の目にとまり、今回の映画化につながったという。末恐ろしいことである。
『バックルームズ』
配給/ハピネットファントム・スタジオ TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
© 2026 Backrooms Rights LLC, PC Films, LLC. All Rights Reserved.
<文/宇垣美里>

撮影/中村和孝

「異様な空間」に足を踏み入れると…
ホラーのはずなのにたまらなく美しい

辛気臭く、滑稽でいてどこか不憫

宇垣美里
’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。

















