人間、「悲しい」ぐらいじゃ死にはしない!【シングルマザー、家を買う/第4章・後編】

<シングルマザー、家を買う/第4章・後編>

バツイチ、2人の子持ち、仕事はフリーランス……。そんな崖っぷちのシングルマザーが、すべてのシングルマザー&予備軍の役に立つ話や、役に立たない話を綴ります。

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何が何でも家を買ってみせる!



 シングルマザーは家を買えないのか。結局賃貸にお金を払い続けて、私に何かがあったら私の娘と息子は路頭に迷うのか。当然、私のお墓は立てられずに海に骨が撒かれるよね…。べつにいいよ。だってお墓に私はいませんって誰かも歌ってたし。いいよ、いいけど…。

 それに、フリーライターって、そんなに信用がないんだ。こんなに一生懸命締め切りに追われて頑張って原稿かいてるのに、仕事しているって認めてもらえないんだ。その原稿を書く家さえ買えないんだ。

 なんで離婚なんかしちゃったんだろう。どうして浮気のひとつやふたつ、許せなかったんだろう。私が我慢すれば、こんな想いをしなくて済んだのかもしれない。子供たち、本当にごめんね……。私が死んだら、一体どうすればいいんだ。こんなチンケな収入じゃ遺産も残してあげられない……。

 ひとしきり不動産屋の前で立ちつくしてこんなことを考えていたら、なんだかバカらしくなってきた。そうだ、ネガティブになったって、何も生まれない。それなら、いま、私にできることを考えよう。

 ……そういえば、芸人志望の若者も、大物芸人に何度も弟子入りを断られるっていうじゃないか。きっとたけし軍団に入るのも、最初からOKがもらえた芸人なんて少ないに決まってる! それなら、私も何度もチャレンジしてやろうじゃないか!

 そう、私はビックリするくらい切り替えが早いのだ。そこが唯一の長所かもしれない。どんなに悲しくても死なないことくらいわかってる。一晩寝たら、大抵気分は上々。失恋したって死なないし、離婚したからって死ぬわけじゃない。辛いって思うだけじゃ死なない。心臓が止まらない限り死なないんだ。それなら!

人間、「悲しい」ぐらいじゃ死にはしない! 顔を上げた瞬間、目に入ったのは不動産屋最大手のM店。よし、ダメもとでこっちに行ってやろう。絶対、家を買ってやるから! そして離婚前よりも、もっともっといい生活してやるんだから! ルンバだって買ってやるんだから! そして、子供たちに私の夢だった部屋をひとつずつ与えてあげるんだから!

 母ちゃん、絶対家を買ってみせるからね! あんたたちをダンボール住まいには絶対にさせないんだから!

 今までにないくらい、鼻息を荒くして、涙が頬から渇かないうちに次の不動産屋へ足を運んだのだった。

<TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ>

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【吉田可奈 プロフィール】
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、音楽ライターを目指し出版社に入社。その後独立しフリーライターへ。現在は西野カナなどのオフィシャルライターを務め、音楽雑誌やファッション雑誌、育児雑誌や健康雑誌などの執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘はネットで見かけた名言“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky

※次回更新は1月21日を予定しています。

シングルマザー、家を買う

年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える!

シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。

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