山田孝之・初の著書はバカらしすぎて怖くなる。『実録山田』謎のヒット中
山田孝之には、相反する魅力がせめぎ合っているように感じます。役者の業とも言える狂気を匂わせながら、道を踏み外すことはないだろうという、妙な安心感があるのです。
してみると、エッセイとも妄想ともつかないグダグダ満載の『実録山田』も同様(2016年3月12日、ワニブックス刊。初の著書)。
山田自身は、本書についてこう語っています。
<ふざけているだけですけどね。(中略)最初からあったのは、読んでイライラしてきて、『なんだ、このくそったれ』って投げるんだけど、2、3秒考えて、『でもちょっと面白いから読んでみよう』って拾っちゃうような本にしたいということ。>
(雑誌「+ act.」2016年4月号 より)
事実、本書の9割以上が、この「くそったれ」で占められています。
たとえば、小学校時代に苦手だった国語の授業を振り返るときに登場する女性教師。その“退屈な幸の薄さ”を表現するために、山田はわざわざ彼女に成り切ってみせるのですが、それ自体が耐えがたい退屈に陥っている。
<このままこんな生活いつまで続くんだろう…教員免許をとった時はあんなに嬉しかったのに…(中略)
でもなぁ…人生は一度きり、あたしだって自分の生きたい様に生きたいもん…今日の朝『めざましテレビ』の占いビリだったなぁ…>(「学力」)
以後、妄想は『めざましテレビ』から女子アナに移り、メジャーリーガーとの結婚、アメリカで起業に成功し、牧場を買い取って両親にA5ランクの肉を食べさせる、と展開していく。
この何一つ読むべきところのない記述に3ページを要しているのですから、恐れ入ります。加えて、60ページにも及ぶ武井壮との対談「人間の弱点」を読み切るのは、もはや苦行。
けれども、それは“スベっている”つまらなさというよりも、ファンをからかうことにすら飽きているかのような無内容なのですね。だから、いらだちつつも、どこか山田孝之の冷たいまなざしを思い出して怖くなってくる。
山田孝之自身が言うとおり、読んでイライラしてくる
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『実録山田』 俳優・山田孝之が自身初の書籍を発売する。数々のドラマ、映画で主演を務め、今や日本を代表する俳優である山田。メディアにあまり登場せず、私生活も謎に包まれている彼が、『実録山田』で綴る内容は、実際に山田の身に起こった出来事から繰り広げられる山田ワールド全開の随筆集! |