Lifestyle

アラサー女はピュアすぎる恋愛相談に答えられない【シングルマザー、家を買う/52章】

アラサーにピュアな恋愛相談は難しい

 頭の回転が追いつかない私を尻目に、娘は「その好きな人はね、最初の文字が……」と言いたくてしょうがない様子。  最初の文字とか言われても全くクラスメイト把握してないし! てかクラスメイトの顔さえ把握してないのに!  普段、アラサーの黒く渦巻いた恋愛相談しか受けてない私には、このピュアでキラキラした恋愛相談はあまりに難易度が高すぎる! 「へぇ」や「ふ~ん」などの感嘆しか出てこない私をよそに、娘のテンションは上がりっぱなしである。 「でもねぇ~。●●(すでに呼び捨て)は、うるさいけどたまにやさしいのぉぉぉぉぉ」  そうか、そうなのか。もはやクイズ形式だった名前も自分で言っちゃってるし。  よし、これは私が話に乗ってあげる方向にしようと決心し、「その●●くんは、どんなふうにやさしいの?」と聞いてみることにした。  すると娘はクッションを胸に抱えて、全身をくねりだしたのだ。 「えぇぇぇぇ、もういえなぁぁぁぁい~! いいたくなぁぁぁい」  うわ~、めんどくせ~。いるわぁ、こういう女子! シングルマザー、家を買う/52章_2

母のささやかな願い

 一気に冷めた私は食器を洗おうとソファから立ち上がると、娘はおもむろに自作の「胸キュンスカッとノート」を広げ始めた。  そうか、そこに自分と●●を当てはめようとしているのか。  しかし相手は小3のただのクソガキだ。ちびまる子ちゃんでいうと、永沢くんや山田みたいな何も考えてないただのガキだぞ。花輪くんみたいなジェントルマンはどこ探してもいないからな!  しかし、娘の顔は本当にうれしそうで、キラキラしていて、可愛かった。  そうか。これが初恋なんだな。  母親である私が何を言えども、ダメ男に引っかかるときはひっかかるし、好きになるときは、好きになってしまう。  でも、お願いだから浮気をしたり借金があったり暴力をふるうようなダメ男にはひっかかるんじゃないよと、キッチン越しに願った。  まぁ、それはおいおい、教えていくことにしよう。 <TEXT/吉田可奈 ILLUSTRATION/ワタナベチヒロ> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 【吉田可奈 プロフィール】 80年生まれ、フリーライター。西野カナなどのオフィシャルライターを務める他、さまざまな雑誌で執筆。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。座右の銘は“死ぬこと以外、かすり傷”。Twitter(@singlemother_ky※このエッセイは隔週水曜日に配信予定です。
吉田可奈
80年生まれ。CDショップのバイヤーを経て、出版社に入社、その後独立しフリーライターに。音楽雑誌やファッション雑誌などなどで執筆を手がける。23歳で結婚し娘と息子を授かるも、29歳で離婚。長男に発達障害、そして知的障害があることがわかる。著書『シングルマザー、家を買う』『うちの子、へん? 発達障害・知的障害の子と生きる』Twitter(@knysd1980
1
2
Cxense Recommend widget
シングルマザー、家を買う

年収200万円、バツイチ、子供に発達障がい……でも、マイホームは買える!

シングルマザーが「かわいそう」って、誰が決めた? 逆境にいるすべての人に読んでもらいたい、笑って泣けて、元気になる自伝的エッセイ。

あなたにおすすめ