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【相模原事件】障がい者が日々感じる、「いなくなればいい」の根っこ

障がい者に配慮する人が誰ひとりいなかった

 先日、品川の水族館に、車いすの方2名と一緒に遊びに行きました。雨だったこともあり、大変混雑していました。  車いすで歩行する場合、周りの人と接触しないよう、人と一定の距離を保つため、混雑した場所では動きにくいようです。そうして、彼らが移動に一瞬ためらっていると、横からたくさんの人がスルスルと追い抜いて前へ行ってしまいました。  そのため、私たちは、いつまで経っても水槽に近づくことができなかったのです。人が前にいると、目線の低い車いすから展示物が見えません。それに配慮してくれる人がまったくいないのです。 車いす 前述の女性は、 「そんなの日常茶飯事ですよ。先に列に並んでいても、勝手に追い抜いて先に行く人なんてたくさんいます」  と言っています。

差別解消法が施行された矢先に…

 2016年4月から、障害者差別解消法が施行されました。  これ、ご存じでしたか? 私は施行直前まで知りませんでした。  その名の通り、障がい者への差別を解消するための法律です。公的機関はもちろんのこと、民間のサービス施設でも「障がい者に手助けを求められたら、できる範囲で手伝いましょう」というものです。  聴覚に障がいがある人には筆記を、視覚に障がいがある人には音声で情報を、車いすの人が段差に困っていたら移動の補助をするなどして、誰もが同じサービスを受けられるように配慮しましょうという法律です。  障害者差別解消法は2008年に国連で採択された「障害者の権利に関する条約」を実行するために作られました。身体、知的、精神といったあらゆる障がい者の尊厳と権利を保障するための条約で、すでに166カ国が批准(同意)しています。  その法律が施行された矢先に起きた、今回の事件。 “異常な個人がやった犯罪”では片づけられない、重い問いが、私たちに突きつけられているように思うのです。 <TEXT/和久井香菜子> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
和久井香菜子
ライター・編集、少女マンガ研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。英語テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。視覚障害者によるテープ起こし事業「合同会社ブラインドライターズ」代表
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