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ロマンポルノ出演作が摘発された“エロスの女闘士”、当時の思いを語る

殴られたら殴り返したくなる

――出演作『ラブ・ハンター 恋の狩人』、主演作『愛のぬくもり』(共に1972)が立て続けに猥褻図画として警視庁に摘発されたあとに公開された本作には、完成台本がなかったとか。 田中:余白がいっぱいあって、自分たちの考えを入れていいよと。私はヒロインの真子をどうやって作っていこうかということと、裁判と向き合っていきたいという本音との中にいました。被告ではないのだけど、自分の作品を罪に問われてしまった形なので、そこは向き合わなきゃいけないと頑なに思っていましたから。そこを避けると、もう少し楽な生き方もあったと思うんだけど(苦笑)。  私には見てみぬふりはできなかったのと、映画を知らない人が映画を裁くというのがすごくいやだった。だから向き合いたかったんです。イキナリ殴られた感じですよね。そうするとどうしても、殴り返したくなる。私って、そうなんです。 ⇒【写真】はコチラ https://joshi-spa.jp/?attachment_id=681848
『恋の狩人・欲望』より_2

『恋の狩人・欲望』より

――ヒロインが本編で読み上げる、瀬戸内晴美(瀬戸内寂聴)さんの本『遠い声』は、田中さんから、監督に「こんな本があります」と提案されたとか。 田中:そうです。生まれて初めて調書を取られて、まだ記憶も生々しかったときに、偶然、書店で見つけたんです。帯に「日本で明治期に最初に処刑された女性革命家」と書かれていて。読んで、しばらくはまりましたね。当時の裁判記録とかが残っていて、瀬戸内先生がそのやりとりをきちんと書いてらっしゃるんだけど、私の体験とまったく同じなんです。なんだ、少しも変わってないんだなと思いました。 ――当時、田中さんは「女闘士」として象徴的な存在になりました。 田中:でも、わたしだけではなくて。(故)山口監督も、ほかの女優さんや俳優さんの調書を見る機会があったそうで、頑張って作ってきた作品が摘発されたことへの怒りがあったのが読み取れたと。それが本作を作っていく起爆剤になったということが雑誌なんかで書かれていました。わたしだけの問題ではなくて、みんなが熱いものを持っていたんです。 ――熱いお気持ちはいまも。 田中:ありますよ。還暦も過ぎましたが、もうちょっと何かしゃべりたいなと思っていますね。やっとそう思えたんです。親の介護もしたりしていて、ちゃんと見送って、それも肩の荷が下りましたし。 初DVD化はタイミング的にもよかった。ちょうど私自身が前へ向き出した、外へ出ようと思ったタイミングで声をかけていただけたので。もう1回命をいただけたと思っています。当時のことを全く知らない人たちも、ぜひ観たままを感じ取ってください。そこに理屈や説明はいりません。 田中真理さん_2<TEXT&PHOTO/望月ふみ> ⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 『恋の狩人・欲望』4月4日(火)DVDリリース (C)1973 日活株式会社
望月ふみ
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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