恨みつらみの気持ちをもって行動に及ぶと、人は心身ともにすり減っていくのではないだろうか。その後、2人は別れた。 　それから5年ぶりについ最近、彼女は彼に偶然会う機会があった。 「まだ50歳にもならないのに、なんだかとってもみすぼらしくなっていました。 　彼、小さな会社を経営していたんですが仕事もうまくいかないらしくて、薄汚れていた。 　それを見て、心から『ざまあみろ』と思いました。 　私立中学に進んだ娘は、高校で結局、学費が払えなくなり、公立に転校したそうです。大学には行かせてやれないとか……。これでようやくすっきりしたと、そのときは思ったんですが、あとからちょっと憐(あわ)れだったなと。 　どうしてこんな人を好きになったんだろうとも思ったし。複雑です」 　彼が距離をとったからこそ、彼女はそれ以上暴走しないですんだのかもしれない。不倫とはいえ、お互いに好きでつきあったのに、きれいに幕を下ろすのはむずかしい。 ＜TEXT／亀山早苗＞ 【亀山早苗】 フリーライター。男女関係、特に不倫について長らく取材し、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖』など著書多数。