出会い系アプリよりもロボット!? 映画『きみへの距離、1万キロ』にみる最先端の恋
こんにちは。映画ライターの此花さくやです。
筆者の10歳になる息子は、なにか分からないことがあるとググらずにYouTubeで検索しています。文字より映像の方がわかりやすいから、と。生まれたときからスマホが存在する世代は情報収集の仕方からして違うようです。
デジタルネイティブ世代の若者たちが恋人探しに活用するのは、やはり出会い系アプリ。しかし、4月7日公開の映画『きみへの距離、1万キロ』で活躍する恋のツールは出会い系アプリではなく、なんとクモ型ロボット! 今回は、そんな最先端の恋の形を描く本作の見所をご紹介したいと思います。
「愛してる! 僕には君だけなのに、君は他の男とヤリたいなんて」と映画の冒頭でキレる若い男、ゴードン(ジョー・コール)。恋人にフラれたゴードンはアメリカ・デトロイトの警備会社に勤め、北アフリカにある石油パイプラインをロボットで遠隔操作しながら監視するのが仕事です。
失恋に落ち込むゴードンのスマホに出会い系アプリを勝手にダウンロードした上司は、「1日10人にメッセージを送るように」とゴードンに指示します。
上司に言われるがまま、10人にメッセージを送るとたくさんの女性から返信が。早速ゴードンは複数の女性とメッセージのやりとりを開始します。ほんの数回のやりとりで「私とは趣味が合わないから会うのはやめましょう」という女性もいれば、「私は真剣な交際は望んでいないの」とカジュアルセックスを匂わせる女性も。
ゴードンはアプリを使い始めてすぐに、ある女性と一夜を共にしてしまいます。しかし、自分の欠点をも愛してくれる“運命の人”の存在を信じるゴードンにとって、これほど簡単に誰かと知り合い、セックスをしてしまうのはどこかむなしい。
なぜなら、複数の人と瞬時につながれるということは、同時に、自分が瞬時に切り捨てられる可能性もあるということだから。
作中、多くの女性と連絡をとりながらも、ゴードンは元カノに似たまなざしをもつ北アフリカの女の子、アユーシャ(リナ・エル=アラビ)に恋をします。ゴードンが操作するロボットのモニターに映るアユーシャは、恋人カリムがいるのに、親子ほど年の離れた男性との結婚を強制されそうになります。北アフリカで繰り広げられるアユーシャとカリムの恋を、地球の裏側のアメリカから応援するゴードン。ついに、彼らを救うためにロボットを使ってある行動を起こします。
「ジュリエット3000」と名づけられた可愛らしいロボットが、ロミオとジュリエットのような恋のキューピッド的役割を果たす点も、本作の見所。
SNSの普及で出会いと別れがいともたやすく消費される現代にあって、一つの愛のためにあらゆる距離を越えていく主人公たちの思いに心が震える1本です。
<TEXT/此花さくや>
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(C) Productions Item 7 – II Inc. 2017
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此花わか
ジェンダー・社会・文化を取材し、英語と日本語で発信するジャーナリスト。ヒュー・ジャックマンや山崎直子氏など、ハリウッドスターから宇宙飛行士まで様々な方面で活躍する人々のインタビューを手掛ける。X(旧twitter):@sakuya_kono
『きみへの距離、1万キロ』は4月7日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開
配給:彩プロ