NHK『あんぱん』“毒親”松嶋菜々子に、ドン引きしつつも憎めないワケ。胸が痛む「息子への言葉」の意味は
主人公らに大きな影響を与える存在として、朝ドラにおける“親役”はとても重要です。現在放送中のNHK連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合・毎週月~土あさ8時~ほか)においても、加瀬亮、江口のりこ、竹野内豊といった豪華な面々が担っています。
なかでもひと際目を引く存在なのが、松嶋菜々子ではないでしょうか。
※以下、『あんぱん』第4週までのネタバレを含みます。
絵本『アンパンマン』の作者・やなせたかし氏の妻である小松暢氏をモデルにした本作。松嶋菜々子は、やなせたかし氏=嵩(木村優来/北村匠海)の母・登美子を演じています。
第1週の物語の冒頭、嵩を連れて、亡き夫の兄で医師の柳井寛(竹野内豊)を頼ってヒロインの住む街にやってきた登美子。当初は、凛とした厳しさはあるものの綺麗で優しい母親に見えました。しかし一変、まだ幼い息子に「すぐに迎えにきますからね」と嘘をついて、置き去りにしていくのです。理由は自身の再婚。
第2週でははるばる会いに来た息子を、新しい家族には「親戚の子」と説明し、「ここに来ちゃいけないの」と帰してしまうのです。時代的に仕方ないと思う一方、令和のイマでは“毒親”といえるかもしれません。
かと思えば第3週の最後では離縁された登美子が、8年間音沙汰がなかったにもかかわらず突然嵩のもとへと舞い戻ってくるのです。さらに自分の居場所を確保するために「嵩が医師になって医院を継ぎます」「この子はやればできる子なんです」と言い放ったときは、ゾクッとしました。
朝ドラの父・母はさまざまなキャラクターで登場しますが、だいたいが良き父、良き母――主人公らに“良い影響”を与えることがほとんどです。ダメ父・ダメ兄が愛すべき存在として登場することはありますが、「毒親」とまで言われるケースは稀。だからこそ朝ドラの毒親はより印象に残ります。
例えば『スカーレット』(2019年/ヒロイン:戸田恵梨香)で北村一輝が演じた父・常治は、借金があるにも関わらず、大酒飲みで怒りっぽい。亭主関白で、娘の進路や結婚にも自分の都合を押しつけるなど身勝手な振る舞いはなかなかに酷かった。
それを上回ったのが『おちょやん』(2020年/ヒロイン:杉咲花)の父・テルヲ(トータス松本)。酒浸りで、借金はもちろん、再婚相手に言われるがままに娘を奉公に出してしまいます。その後も、借金のカタに娘を売り飛ばそうとしたり、娘の通帳を持ち出そうとしたり。朝ドラ史上最低の毒親でした。
今回の松嶋演じる登美子は、身勝手とはいえ嵩を想う姿が見えなくもありません。彼らほどの毒親にはならないと思いつつも、嵩にとって良き母として寄り添う姿も想像できないまま、ストーリーは進みました。
息子を置き去りに。松嶋菜々子「美しい毒親」から目が離せない

朝ドラで毒親はめずらしい? 過去には“震えるほどの毒親”も
