夫・彼がたばこをやめない…せめて加熱式たばこならニオイや受動喫煙の害はどのぐらい減る?
受動喫煙が問題になっている昨今。自分は吸わないのに「夫・彼氏がたばこをやめない」と困っている女性も多いのでは?
近くで吸われると自分や子供の健康に悪い、部屋が汚れる、たとえ近くで吸わなくても彼にニオイがしみついてる――。
筆者も、彼に「禁煙して!」と言って度々ケンカになったけれど、いくら言ってもやめられないようなんです。もうケンカは疲れた…。
せめて、いま話題の「加熱式たばこ」に替えてもらったら、健康被害やニオイは減るのでしょうか?
環境化学の専門家である東海大学理学部化学科教授の関根嘉香(せきねよしか)先生に聞いてみました。
加熱式たばことは、たばこ葉を火で燃やすのではなく、専用のたばこを加熱、または、たばこカプセルに蒸気を通すことによって「たばこベイパー」(たばこ葉由来の成分を含む蒸気)を吸う仕組みです。いま出ているのは以下の3種類(価格は最初に買うガジェット/消耗品のたばこ1箱、税込)。
①IQOS(アイコス)10,980円/460円 フィリップ モリス ジャパン
②Ploom TECH(プルーム・テック)4,000円/460円 日本たばこ産業
③glo(グロー)8,000円/420円 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン
さっそく男性に吸ってみてもらうと…煙っぽいものがプカプカ出ますが、これは蒸気なんですね! 燃やさないから煙は出ないわけです。
また、紙巻たばこだと手に持ってるたばこから煙が出ますが、加熱式は吸った時しかベイパーが出ません。
「受動喫煙の原因となる『煙』は、たばこの先端から立ち上る『副流煙』と喫煙者が吐き出した『呼出煙』です。特に副流煙は、たばこの葉が不完全燃焼の状態にあるので、有害化学物質が多く含まれています。
一方、加熱式たばこは副流煙が発生しませんし、主流煙(喫煙者が吸いこむ煙、呼出煙の元)に含まれる有害化学物質は大幅に低減されています。ですから、従来の紙巻たばこに比べれば、受動喫煙によって有害化学物質にさらされる機会は大幅に少なくなるでしょう」(関根先生)
喫煙者が吸いこむベイパーに含まれる有害化学物質について、アイコスとグローは「(紙巻たばこと比べて)約90%カット」、プルームテックは「99%カット」とアピールしています。自社の実験なので鵜呑(うの)みにはできませんが…。
たとえばスイスの研究チームがアイコスで実験したところ、有害物質のなかでも9割減っている成分もあるけれど、ホルムアルデヒドは26%減という結果でした(実験方法の違いなど議論あり)。
ともあれ、「紙巻たばこよりマシ」なのは事実のよう。
「ただし加熱式たばこでもニコチンは発生しますし、まだ知られていない健康影響があるかもしれませんので、安全性については継続的な研究が必要です」(同)
健康問題に次いで気になるのは、たばこのニオイですね。
実際に、加熱式たばこを吸ってもらったところ、3種とも紙巻たばこよりは、かなりニオイが少ない!
個人的な感想として、ニオイが少ない順に並べると
・プルーム・テック…ほとんどニオイを感じない
・グロー…少しニオイがあるが、不快なほどではない
・アイコス…少し酸味がある独特のニオイ
関根先生に、紙巻たばこと加熱式たばこのニオイの違いを聞きました。
「紙巻たばこのニオイの元は、タールと臭気物質。タールはヤニとも呼ばれる茶褐色の物質です。臭気物質はヒトの嗅覚でニオイとして認識される気体で、例えば3-エテニルピリジンのように分子内に『窒素原子』を持つ物質がタバコ臭の原因といわれています。
加熱式たばこの場合、タールや臭気物質の発生が大幅に低減されており、いわゆる『たばこ臭』は少なくなっています。さらに香料が添加されている場合には、違ったニオイになります」(関根先生)
また、紙巻たばこだと、吸ってないときも夫・彼氏の体がなんとなくたばこ臭いのが困りもの。これも加熱式だと軽減されるそうです。
「当方の最近の研究により、喫煙すると皮膚の表面からたばこ煙中の成分が放散され、体臭に影響することが分かってきました。下図は、同一人物が紙巻たばこ、加熱式たばこをそれぞれ吸引した時のデータです。紙巻たばこを吸うと皮膚表面から3-エテニルピリジン(たばこ臭の一つ)が出てきます。一方、加熱式たばこ(プルームテック)を吸っても3-エテニルピリジンは検出されませんでした」(同)
図1:喫煙者の皮膚から放散されるたばこ臭(3-エテニルピリジン)の経時変化。同一男性被験者が15分間喫煙、紙巻たばこと加熱式たばこで比較.出展:東海大学関根嘉香研究室の実験データ
部屋で紙巻きたばこを吸われると、壁やカーテンに色がついて汚れます。これも、「紙巻たばこ煙に含まれるタールが原因です。加熱式たばこにすることで軽減されます」と関根先生。また、加熱式だと灰が出ないのもポイントです。
というわけで、有害物質、ニオイ、部屋の汚れ、いずれも加熱式たばこにすれば、だいぶ悩みは軽減しそう。
夫・彼氏に、「どうしても禁煙できないなら、せめて加熱式たばこに替えて!」と迫ってみようと決心しました。その場合、注意すべき点は何かあるでしょうか?
「完全に加熱式たばこに切り替われば良いのですが、そうでない場合、紙巻たばこも併用して喫煙習慣がずっと続いてしまう可能性があります。
また、前述のとおり加熱式たばこでもニコチンは発生しますし、まだ知られていない健康影響があるかもしれません。紙巻たばこと同様、喫煙マナーを守って吸っていただきたいですね」(関根先生)
たしかに、「加熱式に替えたからって、所かまわずスパスパやらないでよ」と、念を押しておくべきですね。
<TEXT/女子SPA!編集部 PHOTO/山川修一>
受動喫煙で有害成分を吸ってしまうリスクは減る?
加熱式たばこで、一番ニオイが少ないのは?
図1:喫煙者の皮膚から放散されるたばこ臭(3-エテニルピリジン)の経時変化。同一男性被験者が15分間喫煙、紙巻たばこと加熱式たばこで比較.出展:東海大学関根嘉香研究室の実験データ









