しかもこの親子はかなりしたたかで、すでにAさんと仲良くなりはじめていた千春さんをライバルの座から蹴落とそうと目論見（もくろみ）はじめたのです。 「一人参加の男性で、Aさんの他にもう一人、40代のBさんがいました。この人は見た目がかなりサエなくて、生理的にムリだったので、極力話しかけないようにしていたんです。そしたら、親子そろって、私とBさんがお似合いだと言い出すようになったんですよ」 　完全に恋愛対象外のBさんを、千春さんとくっつけようとしてくる親子。何かを吹き込まれたらしく、Bさんはやたらと千春さんに話しかけてくるようになったそうです。 「私がBさんの対応に手を焼いている隙に、親子はAさんにますます猛プッシュをかけ、結局Aさんはこの親子と行動を共にするようになってしまいました…。旅の前半は明らかに私のほうが優勢だったのに、後半に形勢が逆転しましたね。見た目も年齢も彼女のほうが有利なのに、母親という強力なサポーターもいて、完全な負け戦となってしまいました(泣)」 　旅の最終日、Aさんは例の親子と一緒のテーブルでディナーを楽しんでいて、隣のテーブルに座った千春さんは、彼らの会話にジッと耳を傾けたそうです。 「『今度は3人で一緒にハワイに行きましょう』って母親が提案しているのが聞こえてきて、Aさんも『ぜひ行きましょう』ってノリノリだったんです。あぁ、もうこの恋は終わったなって思いました」 　それでも望みは捨てきれず、最後にAさんから連絡先を聞かれることを心待ちにしていたそうですが、結局何のアクションもなく連絡先交換はできずに終わったそう。 「Bさんからは、LINEを交換しましょうって言われてしぶしぶ交換しましたけど、すぐにブロックしました…」 　旅先で、はかなく散ってしまった千春さんの恋。どこに行ってもイケメンはモテますから、恋のライバルには十分にご注意を！ ―シリーズ 旅行のヒサンな話 vol.11― ＜TEXT／りょうこ　イラスト／やましたともこ＞