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美容師さんの安月給が泣ける…「QBハウス」は人手不足で10分1200円に値上げ

 カリスマ美容師ブームに乗って美容師になった世代が今、多くの問題に直面している。増え続ける美容室、人手不足、働き方改革……。美容師業界を取り巻く問題をリポートする。 [美容師]残酷物語

美容師の平均年収は260万円ほど

 かつてのカリスマ美容師ブームで世間の注目を浴びても、一向に改善されないどころか閉塞感が増すばかりの美容師業界。問題の本質はどこにあるのか。業界に精通するコンサルタントの富成将矢氏は、「圧倒的な生産性の低さ」を指摘する。 「コンビニの4倍以上もあるのに、美容室全体の売り上げ規模は1.5兆円程度で平均年収は260万円ほど。あらゆる業種の中でも非常に低い状態で、これは1人あたりの生産性の低さを示唆しています。美容業界は徒弟制度が一般的で良くも悪くも伸びる人は伸び、伸びない人は伸びにくい環境でした。しかし、少子化によりこのビジネスモデルも危うくなり、近年は人手不足が最大の廃業理由なのです」(富成氏、以下同)  最近では師匠と弟子の関係性が逆転してしまっているとも。 「カリスマ美容師ブームの頃は“憧れ”で人が集まりましたが、今はネットで簡単に条件の良い職場を検索できるので、カリスマ性だけでは経営できない。週休保証やアシスタント期間の短縮など好条件を提示して弟子を取り合わねばならず、弟子に“寄り添い型”のマネジメントが要求されます」  若い頃は師匠に気を使い、晴れて独立したと思ったら今度は弟子に気を使い……という悲しい現実が30代、40代の経営者を待ち受けていたのだ。さらに、人海戦術で生産性の低さを補えなくなった以上、別のアプローチを模索しなければ生き残れない。 「ひとつの試みが『QBハウス』のような効率化です。10分1000円(税込1080円)のカットは時間換算すると生産性が高く、その分、給料は割高で、腕の立つ美容師が集まっています

「QBハウス」が値上げに踏み切った理由

 その「QBハウス」は、2019年2月から10分1200円(税込)に値上げすることを発表したばかりだ。理由は人手不足。 「給料が割高」といっても、同社の募集要項をみると初任給は17万〜18万3000円(地域によって違う)。全業種の平均=大卒20万6000円、高卒17万9000円(平成29年・厚生労働省調べ)に比べると、厳しいものがある。  なので、値上げは、給料を上げて美容師を集めるためだと言われている。 「もうひとつ、今後美容室が伸びていく上で重要な戦略は『経営の多角化』。ヘアカットだけでなく、マツエク、ネイル、エステ、飲食を含めたインナービューティなど、“専門店の集合体”として展開すること。職人気質の美容師には抵抗があるかもしれませんが、異業種参入も増えており、閉塞感を打破する起爆剤となる可能性があります」  当然、幅広い人材をマネジメントしなければならないが、富成氏は「これからの美容室経営は、“技術”よりも“人”が重要」になってくるだろうと語る。 「男性美容師の寿命は、人気的に40代までといわれています。ですから、スタイリスト的な技術に固執することなく、いかに生産性を上げていくか。いくら腕があっても1人あたりの生産性には限界がありますからね」  人、効率化、他業種を組み合わせるマネジメントこそ、これからの美容室ビジネスの命運を握っているのかもしれない。 【富成将矢】船井総合研究所所属。ビューティーチームのリーダー。美容室の業績アップを得意としており、地域密着型から大手有名美容室まで全国に多数のクライアントを持つ ― “美容師業界”のせつなすぎる現実 vol.3 ―
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