子どもの笑顔を守るも潰すも親。なら、ずっと笑わせてやる!
この人は強い。改めて、そう思った。
ぽんちゃんが障害を持って生まれてきたなら、
もう逆手にとって楽しむしかない。だって、この子は、私しか守る人がいないのだから。

それに、ぽんちゃんは、毎日信じられないくらいかわいい。いたずらもするけれど、私が怒るとギュッと抱きしめてくる。もう、許すしかない。そして、「好きだよ~」というと、ぎゅっと抱きしめてくれる。
ぽんちゃんは、ぽんちゃんであり、障害があるからどうということではない。ぽんちゃんは、ぽんちゃんなのだ。
それなら、あらゆる有利な情報を得て、使って、幸せになるしかない。
将来のことばかり考えて真っ暗になるよりも、毎日を楽しんでその積み重ねが未来になる方が、絶対に幸せに決まっている。周りが悩んで、落ち込んでてもぽんちゃんは笑顔なんだから、私も笑顔になるしかない。
それに、当の本人は、毎日、楽しそうに暮らしている。
この笑顔を守るも潰すも、親の私なのだ。それなら、ずっと笑わせてやる! そう誓うと、不思議と悲しい気持ちは薄れていた。前向き、前向き!
そしてその1カ月後、ぽんちゃんは愛の手帳を習得した。それから5年経った今でもクタクタになるくらい、毎日手帳を活用している。ぽんちゃんがいると並ばなくていいという悪知恵を得たみーちゃんは、
「ぽんちゃんと遊園地行く~!」とよく叫んでいる。いちばんメリットを得たのは姉のみーちゃんかもしれない(笑)。
ちなみに自閉症のレイくんは集中力が尋常ではなく、小学校は支援学級と普通学級の両方に籍を置きながら、なんと今、中学受験にチャレンジしているという。
得意科目は算数で、覚える速度が異常に早いんだとか。変わらず、電車は好きなようだ。
私が引っ越してしまってからは、年に数回しか会えないけれど、現在6年生となったレイくんはイケメンかつ、ママの血なのか、好奇心旺盛に育っている。そして、ぽんちゃんとも遊んでくれている。
この出会いも、すべてぽんちゃんが引き寄せてくれたのかなと思う今日この頃。すべての出会いに大きな意味があるというのは、本当のことのようだ。
<文/吉田可奈 イラスト/ワタナベチヒロ>
【登場人物の紹介】
息子・ぽんちゃん(8歳):天使の微笑みを武器に持つ天然の人たらし。表出性言語障がいのハンデをもろともせず小学校では人気者
娘・みいちゃん(10歳):しっかり者でおませな小学5年生。イケメンの判断が非常に厳しい。
ママ:80年生まれの松坂世代。フリーライターのシングルマザー。逆境にやたらと強い一家の大黒柱。