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BTS騒動の中、紅白に出るTWICE。韓日台ガールズの実力のほどは?

 BTS(防弾少年団)の原爆Tシャツ問題に揺れるKポップ。徴用工判決などもあり、日韓関係には不穏な空気が漂っています。そんなわけで、今年は紅白から韓国のグループが締め出されるのではないか、との心配もありましたが、9人組のガールズグループ、TWICEは昨年に続き2年連続での出場が決定しました。
TWICE_『YESorYES』

オリコン週間アルバム ランキング(11/5~11/11)で1位に輝いた、TWICEの韓国6thミニアルバム「YES or YES」(輸入盤/11月8日発売)

<※TWICE(トゥワイス):2015年に韓国で結成。メンバーは韓国人5人、日本人3人、台湾人1人。ソフトバンクのY!モバイルCMでもおなじみで、2019年3月には初のドームツアーが行われる>  このニュースに、ファンからは「とばっちり受けなくて良かったね」と喜びの声が聞かれる一方、“原爆Tシャツ”にお怒りの方々からは「日本国籍の歌手だけで放送してほしかった」なんて声も。

大人が聞いてもTWICEの音楽はいい

 たしかに徴用工判決は馬鹿げていますし、原爆Tシャツも幼稚の極みなので、そう言いたくなる気持ちも分からないではありません。でもここはひとつ、広い心を持って、政治とエンタメを切り離して受け入れてあげるぐらいの度量を見せても別に罰は当たらないんじゃないですかねぇ……。  と思いたくなるぐらい、TWICEの音楽は良いのです。と言っても、筆者も最初はあまり関心がありませんでした。“TTポーズ”だとかYMCAのカバーだとかありましたが、“また新しいグループができたのね”ぐらいにしか思っていませんでした。でも、そんななかたまたま耳にした「I WANT YOU BACK」(1969年)のカバーに心奪われてしまったのです。  まず特筆すべきは、サウンドの切れ味。コード進行やギターのリフなど、特徴的なアレンジはそのままに、よりアタック感を強めたモダンでタイトな味付けが新鮮に響きます。  あと、これはJポップと対照的なのですが、音と音の間に“すき間”があるのですね。足し算で音を重ねていくのではなく、引き算によって曲のエッセンスを際立たせている。そうすることで、少し抑えたトーンで大人な雰囲気になるわけです。どちらがいいとか悪いとかではなく、日本のアイドルソングと大きく異なる点です。  そして、TWICEのボーカルも素晴らしい。ジャクソン5(マイケル・ジャクソンとそのファミリー)のカバーとなると、どうしてもブラックミュージック寄りに歌い上げるか、逆にわざと幼く崩してしまうかになりがちなのですが、彼女たちはそのどちらにも陥りませんでした。みずみずしく朗々としながら、適量の色気をまぶした声の出し方が絶妙なのですね。

日本語歌詞の「BDZ」に見る運動神経のよさ

 そんなわけで意識してTWICEを聴くようになって、他にもお気に入りの曲が見つかりました。なかでも筆者がハマったのは「BDZ」(ビー・ディー・ゼット)という曲(2018年9月リリース)。少し細かい話になりますが、3連のシャッフルという難しいリズムも歯切れよく乗りこなしてしまう運動神経に感動しました。  こういう曲にヒットチャートで出会える喜びは、ブリトニー・スピアーズの「Womanizer」を聴いたとき以来かもしれません。  さて、TWICEは大晦日にどの曲を披露してくれるでしょうか? 色々と難しい状況にあるKポップですが、せめて音楽ぐらいは良いものは良いと認めて、交流を深めていきたいものです。悪い意味で“ガラパゴス”にならないためにも。 <文/音楽批評・石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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