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羽生結弦、宇野昌磨も話題の選曲。フィギュアに歌詞アリ曲ってどう?

 12月7日から始まるグランプリファイナルを前に、盛り上がりを見せるフィギュアスケート。男子は、残念ながら絶対王者の羽生結弦選手(23)は欠場が決まりましたが、成長著しい宇野昌磨選手(20)に期待しましょう。一方、女子の新星は紀平梨花選手(16)。グランプリシリーズ2連勝と、圧巻のデビューでした。

宇野昌磨×「天国への階段」

宇野昌磨

「宇野昌磨2019年カレンダー」

 そんなフィギュアスケートの華のひとつが、音楽。同じジャンプやスピンでも、曲が変われば見え方も違ってくるから面白い。毎シーズン、選曲を楽しみにしているファンも多いと思います。  今シーズンは、宇野昌磨選手がショートプログラムで「天国への階段」(レッド・ツェッペリン)のインストバージョンを使用して注目されています。  紀平梨花選手の「月の光」(ドビュッシー)も、お馴染みの楽曲ですが新鮮ですよね。

羽生結弦と、まさかのプリンス

 そんなフィギュアスケートの音楽が大きく変化したのは2014年のことでした。それまでアイスダンスとエキシビションのみでの使用が許されていたボーカル曲が解禁されたのです。これによって、それまでクラシックや映画音楽以外のジャンルを耳にする機会も増えました。
羽生結弦 2018-2019

「羽生結弦 2018-2019カレンダー」

 一番有名なのは、2017年、羽生結弦選手の「Let’s Go Crazy」(プリンス)でしょうか。まさか試合でこの曲を聴けるとは思っていませんでした。実験的な選曲に、エンタメ性と競技性を高い次元で一致させた羽生選手の凄みを、改めて知ったのでした。  でも、みんながみんな羽生選手みたいに仕上げられるわけではありません。確かに、見ている側からすると歌声や歌詞をヒントにプログラムを深く理解できる面もある一方で、想像する楽しみがなくなってしまう可能性もあるわけです。  それだけならいいのですが、なかには音楽を持て余していたり、ちぐはぐになってしまったりするケースも……。

どうもフィギュアに合わない名曲も

 たとえば、「Imagine」(ジョン・レノン)を選んだアイスダンスのマディソン・チョック選手(26)とエヴァン・ベイツ選手(29)や、「Hallelujah」(オリジナルは故レナード・コーエン)を使ったパトリック・チャン選手(27)、隋文静選手(23)と韓聰選手(26)のペア。  この場合は、彼らの演技うんぬんではなく、単純に選曲ミスだったように感じます。フィギュアでやるには、曲のスケールが大きすぎるのですね。  BBCの記事でも、「自らの曲が使われる現状を、作者のレナード・コーエンがどう思ったかは推測するよりほかない」なんてイジワルな書き方をされていました。  その他で目立つのは、ヒット曲のビッグバンド風アレンジでしょうか。本田真凜選手(17)の「Seven Nation Army」(オリジナルはザ・ホワイト・ストライプス)や、ポール・アンカが歌った「Wonderwall」(オリジナルはオアシス)を使ったパウル・フェンツ選手(26)などが浮かびますが、これも何かが違うような……。  それに、どことなく加藤茶(75)の“ちょっとだけよ”感が出てしまう気も。同じジャズなら、ビル・エヴァンスやキース・ジャレットのようなピアノソロなら合うと思うのですが、どうでしょうね?

フィギュアに歌詞アリ曲ってどうですか?

 さて、以上を踏まえたうえで、ライトなフィギュアファンの筆者なりに、ボーカルと歌詞はない方がいいと考えます。スケーターの表情や振り付けに、肉声や言語まで加わってしまうと、表現が渋滞を起こしてしまうからです。  あとは、エキシビションの楽しみにとっておきましょうよってことですかね。2002年ソルトレイクシティ五輪でのミシェル・クワン(38)が忘れられません。故エヴァ・キャシディの歌う「Fields Of Gold」(オリジナルはスティング)と、感情を抑えた演技が見事にマッチしていました。 Michelle Kwan ボーカル曲解禁で、試合とエキシビションとを隔てるメリハリが失われてしまったのだとしたら、とても残念なことだと思うのです。 <文/石黒隆之> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
石黒隆之
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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