彼女には何も言えず、外へ出たミキさんだが、その後、猛烈な怒りに襲われた。あわてて待ち合わせのレストランへ行くと、彼が待っていた。

「いつものように食事して、でもときどきわき起こる怒りを制御しながら、いつ本当のことを言おうかタイミングを狙っていました」
食事も終わるころ、彼は真顔で彼女に言った。
「
来年こそ片をつけるよ。そうしたら一緒になろうって。A子はどうなるのよ、と私はつぶやきました。彼は驚いたような顔をして。
A子よ、A子。彼女のところに予約したケーキを持っていったでしょ、さっき。5年のつきあいなんでしょ、私たちは8年だけどね。あっちに週に4日も泊まってるんでしょ。
あんた、ふたりの女にプロポーズしてどうなるかわかってるのって叩きつけるように言ってやりました。あんまり頭に来たんで、目の前にあったグラスの水を思い切り顔にひっかけて」

このまま黙っていては、さらなる被害者がでるかもしれない。そう思ったミキさんは
A子さんのマンションにとって返し、すべてを暴露した。
翌日、
会社の役員に直訴、さらに彼の妻にも連絡をとって自分のこともA子さんのこともすべて話した。
「彼があのレストランで、『来年こそ一緒になろう』なんて言わなければ、私は密かに身を退いてA子の夢を壊さないつもりだった。だけど
あの一言でブチ切れたんですよ。コイツは女の敵だと思った。こういう男をのさばらせてはいけないんだって、妙な正義のスイッチが入ってしまった」
今、彼や彼の妻がどうしているのか、A子さんはどうなっているのか、会社としてどう対応するのか、これからのことはまだ不明だ。
「やり過ぎたかなという思いはあります。最悪、私も会社をやめざるを得なくなるのかもしれないけど、後悔はしていません」
私憤か公憤か、彼女の突如としてわきおこった正義感の原因はわからないが、今後の話はまた改めて聞きたいと思っている。
<文/亀山早苗>
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