自分は借金のカタに嫁入りしていた……夫に知らされた衝撃の事実
家に戻ると、夫がにやりとしながら言った。
「おまえ、実家に行っただろう。
おまえが実家に戻るなら、あの工場が倒産しかかったときに出してやった3千万円を今すぐ返せって父親に言ってやれよ。それから子どもは絶対渡さないからな」

そのときアキコさんは初めて知ったのだ。自分が結婚したことで、夫の実家から父親にお金がわたり、父親の工場が持ち直したことを。
「
私は借金のカタに売られたも同然だったんです。だから夫サイドにしてみれば、働けるだけ働かせたかったんでしょう。すべてが腑に落ちた。もう自分ではどうにもならないんだなと諦めもつきました」
それからは夫一家に仕えるしかないと自分を押し殺して生きてきた。
「ただ、先日、15歳になった娘が私にひっそり言ったんです。『
おかあさん、私が大人になったら一緒にこの家、出ていこうね』って。娘は全部見抜いている。娘には大学までいってもらいたいです。姑は高校まででじゅうぶんだと言っていますが、娘には専門知識を身につけてひとりで生きていけるようになってもらいたい。私は娘の人生の邪魔はしないつもりです」
実家の両親には、真実を知ったことを知らせていない。今も町工場で必死に働く両親や妹たちに負担をかけたくないからだ。
「私を犠牲にせざるをえなかった両親の気持ちを考えると哀しいです。
たまに両親に会うと、妙に卑屈(ひくつ)になっている。だからあまり実家にも立ち寄らないほうがいいのかなと思って」
アキコさんの目が潤む。いつかは義父母もいなくなり、社長夫人となる日がくるのだろう。だが、その立場を彼女がよしとするのかどうか。なんとも釈然としない思いが残った。
<文/亀山早苗>
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