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『凪のお暇』高橋一生が“ヤバい”。原作イメージと違っても高評価な理由

『逃げ恥』『下町ロケット』イメージが違っても成功した例はある

 例えば、社会現象を巻き起こしたTBS系ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で演じた主人公の叔母・百合ちゃん。  原作では目の下の皺が目立つ、隙のない独身キャリアウーマンの印象でしたが、ドラマではご存知の通り、年齢を感じさせない美しさ・可愛らしさを持つ石田ゆり子さんが演じていました。
 キャスト発表当初は、原作ファンから「かわいすぎる」という意見があがったものの、ドラマのヒットとドラマ内のキャラが高評価を受けたことによって、ドラマ鑑賞後に原作を見たファンが小さなショックを受けるというような逆転現象が起こったことも記憶に新しいところです。  同じくTBS系ドラマ『下町ロケット』の天才女性エンジニア・島津を演じたイモトアヤコさんも、原作で表現されている少し小太りのクールで知的な女性像と、バラエティで活躍する本人のキャラクターとは全く別のものでしたが、その演技力で原作のイメージに寄りながらも、イモトさんなりの新しい島津を確立していました。

高橋一生でなければ成立しないドラマの”空気”

 たしかに高橋一生さんには、原作の慎二から醸し出される幼い言動やチャラさはありません。年齢が高く、存在感や演技力がある分、演技の中でどんな酷いことをしても、その裏の意味や台詞の重さを感じさせます。
 一方で、ドラマの内容に目を向けると、「空気を読みすぎてしまう自分を見つめ直し、人生のリセットをする決心をした主人公の成長」というテーマ性をはっきり前面に打ち出しているためなのか、ナチュラルな描き方をしている漫画よりもどこか内容がシリアスな印象を受けます。  だからこそ、原作のイメージであるチャラくて不器用そうな慎二ではなく、高橋一生さんのような色気と存在感のある慎二でなければいけなかったのでしょう。高橋一生のキャスティングは、まさに、ドラマの“空気感”に合わせたものだったではないでしょうか。  原作の慎二のイメージで払しょくできずに嘆くファンもまだまだいるかもしれません。しかし、漫画と実写は別の作品と考えるべきだということは、ドラマ制作者や評論家などから、かねてから言われていることです。  原作のイメージにとらわれるよりも、まずひとつのドラマとして楽しむことが、ドラマ『凪のお暇』を楽しむ秘訣なのかもしれませんね。 <文/小政りょう> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】
小政りょう
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦
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