いつもと明らかに違う沙織さんの様子に彼も「わかった」と言って全員急ぎ足で駐車場に。しかし、ここでも新たなトラブルが起きます。
「いざ車を動かそうと思ってもエンジンがかからないんです。運転手だった友達は『あれ?』って首をかしげていましたが、私はその間も半泣き状態で、お願い、お願いだから早くって言い続けていました。
何度もカギを回してようやくエンジンがかかって、急発進で公園を後にしました。座っていた後部座席から後ろを振り返ってもカオナシの姿は見えませんでしたが、公園のある山から離れるまで嫌な感じはずっと続いていました」

「千と千尋の神隠し」ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
友人たちには公園を離れた後に事情を説明。カオナシについて最初は茶化されたりしましたが、真剣な表情で話す沙織さんに友人たちも何も言わなくなったといいます。
「けど、気になってその公園で何かあったのか町の図書館に行ったときに調べたんですけど、事件も事故も起きたということは確認できなかったんです。もしかすると大昔に何か因縁のあった場所なのかもしれません。
それが何なのかはわかりませんが、私はあれ以来『千と千尋の神隠し』が観られなくなっちゃった。持っていたDVDも妹にあげちゃいました、カオナシを見ると、あのときのことを思い出してしまいそうなので……」
まさかこんな理由で作品がトラウマになってしまう人がいるとは、スタジオジブリも想像していなかったでしょうね。
―シリーズ「
怪談・ゾッとする話/不思議な話」―
<文/トシタカマサ イラスト/真船佳奈>
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。