「とにかく奥さんは、真面目で先生に何度も質問しながら料理に取り組んでいました。私は同じグループの人達とインスタに載せる用の動画や写真を撮りながら、難しい事は先生にやってもらっちゃいました」
なんとかグリーンカレーとヤム・ウンセン(春雨サラダ)を完成させ、キレイに盛り付けをすると…またもや教室内はインスタのための撮影会状態に。真上から料理の写真を撮ろうと椅子の上に乗ったり、料理と自分を一緒に撮ろうと自撮り棒を出す人達でにぎわっていたそう。

「そんな中、奥さんは写真なんて1枚も撮らずに料理をパクパク食べ出したんですよ…しかもとても美味しそうに。なんかそれを見た瞬間にハッとしてしまって」
周りのみんなが、インスタで“私、タイ料理を習っている意識の高い女ですよ”アピールをするために、ちょっとでも見栄えの良い写真を撮ろうと必死になっているなか、マイペースを貫いている奥さんの事をついかっこいいなと思ってしまった亜弓さん。
「なんかシンプルに自分の好きな事に没頭して、人に左右されないってうらやましいなって。それがきっかけで色々考えてしまって…」
自分は美術の勉強をするために上京して美大に通っているのに、不倫なんかして、Mさんの一言で泣いたり落ち込んだりしてバカみたい。インスタで偽りのリア充アピールしてる時間も無駄だし、もう疲れた。そんな事よりもっと勉強しなくちゃと思うようになった亜弓さん。
「あと、ずっと気がついていない振りをしていましたが、やっぱり不倫なんて良くないですし。私はMさんを奥さんから略奪したいんじゃなくて、私だけを好きになってくれる人が欲しいだけだと気がついて」
MさんにLINEで別れを告げたところ…
「そしたらMさんが『いきなりなんで? 俺、何かした? 嫌だよ別れたくない』ってしつこくて…なんかダサい人だなと引いちゃってブロックしちゃいました」
亜弓さんはバイトを辞めて、今は学業に勤しんでいるそうです。
―
恋愛バトルの顛末―
<文&イラスト/鈴木詩子>
⇒この記者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】鈴木詩子
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:
@skippop