「私の周りの女優を目指している人たちは、それこそ幼少期からレッスンを本格的にしていたり、なんらかのチャンスに恵まれてきたりしている人ばかりなんです。有名なドラマや舞台の出演経験が何度もある、なんていう人もザラで。
『オバサンになってから夢を追いかけるとか、恥ずかしくないの?』だなんて、自分よりずっと年下の子に言われたこともあります。ひどい言葉をかけられたのは、一度や二度のことじゃないんです。言ってくる人たちは、まず間違いなく東京生まれ東京育ちですね。私と立場を交換してほしいですよ」

しばし無言の時間が続いてから、「でも最近、いいこともあったんですよ」と、目に見えて明るい表情になって、華さんは改めて話し出しました。
「上京してから知り合った方の小劇団のオーディションを受けたら、とある役に合格したんです。正直、知り合いだから甘く審査してくれたのかと思っていました。そうしたら先日主宰に、『華のことは実力で選んだんだから、死ぬ気で役を演じろ』と、激励されたんです。うれしかったですね。舞台稽古がはじまってさらに忙しくなり、生活自体はよけいに大変になってしまいました。だけど、舞台が終わるまでは、まだ東京で頑張るつもりです」
そう一気に話してから、少し考えた様子で、「せめて、憧れの深津さんと共演するまでは、頑張りたいですね」と笑って、華さんは話を終えました。芸能界で成功するということは、地方出身であろうと、元々都心住まいであろうと、困難な道のりであることは間違いありません。都会へのコンプレックスをこじらせず、華さんの夢が叶うことを応援するばかりです。
―シリーズ「
地方の闇/都会の闇」―
<文/女子SPA!編集部・イラスト/カツオ>
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